まりぃくりすてぃ

三人姉妹のまりぃくりすてぃのレビュー・感想・評価

三人姉妹(2016年製作の映画)
3.1
主題は恋愛。素材も恋愛。長所が恋愛。短所も恋愛。愛さえあれば、なんていう中身なら、もっと短くまとめられなかったか?
「靴はこちらに 愛はどこにでも」は名言だと思うし、サングラスしてる婿候補ユダがアラン・ドロン風だったりした海水浴シーンはフランス映画と見まがう美しさだったけど。

海水浴なんてのは後半の1シーンであって、、、、
家族映画としてのエンタメ性にわかりやすく励んでた旧作(1956年/ウスマル・イスマイル監督版)と、つい比べる目で観た。
今回、世界標準に達してるオープニングの洗練度。歌も強い。赤・白・紺のラララなバスローブ! 人物たちがちっとも類型的でなく、ちゃんとリアルな息をしてる。お祖母ちゃんのパワフルっぷり、悪くない。
でも、リアルはリアルでも長女と次女の顔立ちがムダに似すぎてて、しかも旧作みたいには次女にスポットライト当てない脚本だから、恋が大きく動く後半まで長女と次女の区別がまったくつかずに私は困った。
その一方、三女が(行動ふくめて)ムダに可愛すぎて、この目立たせ方はアザトイと少し思った。
主題というか、おそらく「a silly love movieをでっかく咲かせちゃえ!」という心意気ばかりが前のめりで、物語全体がルーズ。

でもね、自由奔放(例えていえば “トレンディドラマ” 的)な開花なんか許さずにインドネシア女性をヘジャブの中に閉じ込めよう閉じ込めよう、というここ十年ほどの不寛容(イスラム原理主義的)な社会風潮に抗するために、六十年ぶりのリメイクを敢行したんだとか。
女性解放思想を後押ししたイプセンの名作文学『人形の家』(ヒロインはノラ)を、90年代にイランのダリウシュ・メールジュイ監督が『サラ』というペルシャ絨毯映画にした。メールジュイ監督は「百年以上前のノルウェイの文学をなぜ今イランで映画に?」と問われて「今のイラン女性にこそ必要な物語だからです!」と力強く切り返したという。その『サラ』は、主演女優キレイだけど大して面白い映画じゃなかった。でも、“意義” 大あり!
それと同じ、たぶん。アメリカのヘンリー・コスター監督映画(1936年)の翻案が根っこである今回の『三人姉妹』の高らかなリメイク(ニア・ディナタ監督)を、やらなくてもよかったなんて非難するわけには私いかない。
もちろん、政府の悪口まったく言っちゃいけないみたいな異常な不寛容(まぁつまり、ファシズムね)にぬっぺりにゃっぺり覆われてきてる日本も、こういう勇気をどんどん充填だよ!


 ★Silly Love Songs★

バカげたラヴソングはもうたくさんだと
君は思ってるらしいけど
周りを見るかぎり そうでもないよ
この世をバカげたラヴソングで満たしたいって
そう思ってる人間もいるのさ
それのどこがいけないんだ?
僕はこりずにこう言うよ
I love you 愛してる
I love you 君に夢中さ

      (by  Paul McCartney)