ねーね

光のねーねのレビュー・感想・評価

(2017年製作の映画)
3.4

視覚障がい者のための「映画音声ガイド」に携わる美紗子と、視力を失いつつあるカメラマン中森との出会いと再生を描いた物語。

視覚障がい者の目線を意識したような独特のカメラワークゆえか、1時間半のあいだ、この世界に深く深く没入してしまった。
きっと目を閉じて耳を澄ませてしまったのは、私だけではないはず。
まさか映画館で目を瞑るなんて思わなかったけれど、普段私は視界に頼りすぎているのかもしれないと思わされた。目で見えてても見えていないものがきっとあるはずなのに。
彼らの心の揺れ動きに感情が昂ぶるのを静かに感じ、本作の1テーマでもある「他人の人生」の重みを全身で受けとることができた気がする。

これは決してラブストーリーではなく、人が自分と向き合うまでの生々しい過程そのものだ。
誰もが大切ななにかを心に宿している。
家族や恋人、たしなみ、かけがえのない宝物。
たとえそれらを失っても、人生は続いていく。
そこには恐怖もある。不安もある。慟哭し目を伏せ逃げ出したくもなる。
それでも、もがき苦しみながらも、光は毎日、平等に訪れるのだ。
どうしようもない絶望に射し込む希望の光は、とてもとても美しかった。
転びながらも光に照らされて立ち上がる人々の姿を丁寧に、エモーショナルに切り取っていた。
劇場を出たとき、世界がすこし違ってみえて、明日もまた頑張ろうと思えた。

本作をとおして、私が映画を好きでいる理由を思い出した。
それはカメラをとおして自分の知らない世界をみせてくれるから。
いままで見えていなかったモノにそっと気がつかせてくれるからだと。
映画もまた、希望を与えてくれる光のひとつなのだろう。
カンヌでこの映画が評価されている理由がわかった気がした。
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