emily

ライク・ア・キラー 妻を殺したかった男のemilyのレビュー・感想・評価

3.7
1960年、ニューヨーク、神経質過ぎる妻クララに息苦しい思いを感じているウォルターは、パーティである女性に惹かれてしまう。妻は常に浮気を疑い、ある日自殺未遂してしまう。ウォルターは妻が殺害された記事を思い出し、犯人と疑われてる夫に接触を図る。同じ状況におかれたクララが同じように居なくなり。。

妻を殺した男と妻を殺したいとおもった男。その境界線は明らかであるが、 男の心理を逆手に取り、その隙間をグリグリと抉り、疑いのオーラが真実の筋を崩壊させていく。2人を警察の目が大きく2人に覆いかぶさり、その場しのぎの嘘がどんどん暴かれていく。1つの疑いは膨大に広がりを見せ、真実を上塗りし、それに追い詰められていく様が繊細に描かれている。

全編を通して古き時代のレトロなインテリアに暗いトーンの中、浮かび上がる赤色が不気味にコントラストを浮き彫りにし、見た目と真実は全く違うところにある事を分かって居ながらも翻弄されてしまう。真実と疑惑、そこにウォルターの心の声がのる自身の小説が交差し、男目線で語られながらも肝心な部分は見せず、妻はただのヒステリックな女に映り、観客に油断を許してしまわせるのだ。

暗いトーンの中、わずかな光から浮かぶ影を効果的に利用し2人と警察により繰り広げられる銃撃、心理戦からアクションへ発展し、滑稽に追い詰められていく。殺人なのか?自殺なのか?妻を殺したい、死んで欲しいと思った心の声が現実化された時のわずかな気の迷いと罪悪感を絶妙にコントロールし、"罪"の定義を観客にも叩きつけてくるのだ。罪の境界線はいつでも紙一重であること、1つの選択が大きな落とし穴に導かれることがある事を、改めて考えさせられる。
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