dm10forever

gifted/ギフテッドのdm10foreverのレビュー・感想・評価

gifted/ギフテッド(2017年製作の映画)
4.3
【Giftedとは誰の為のものなのか】

この映画のタイトルにもなっている「Gifted」という言葉ですが、日本ではあまり聞き馴染がないかもしれません。

一般的に日本では「GIFT(ギフト)」と聞くと「贈る」「贈り物」「プレゼント」というイメージで使われることが多いと思いますが、これがGiftedとなると実はあまり使われていないと思います。
一方アメリカでは「Gifted」というと『神様から与えられた特別な才能』という意味になります。
これはキリスト教的な考え方なのかもしれませんが、日本人ってそういう存在を「天才」っていう一言で片づけてしまいがちですよね。
いわゆる「偶然生まれただけ」的な。
でも、Giftedってちょっと違うんですよね。
神様がその人に与えた才能、能力、特別な力だから偶然ではないんです。
神様の意志なんですね。
で、それを伸ばすも殺すも本人の考え方、受け止め方、そして努力次第というところです。

さらに言えばGiftedは才能だけを指すわけではありません。
わかりやすい例が「バットマン」です。先日の「ジャスティスリーグ」の1シーンで「あなたの能力は?」と尋ねられたブルース・ウェイン(バットマン)が「金持ちさ」とジョークのように答えるシーンがありましたが、あれもGiftedなんです。
超が付くほどの資産に恵まれた家庭に生まれたブルース・ウェインがその与えられたものをどう使うのか?これが彼にとってのGiftedとも言えるのです。
同じようにマイケル・ジャクソンは歌とダンスの才能を与えられたと評されています。

主人公のメアリーは数学の天才的な才能を持った7歳の女の子。
まさにGiftedだ。
そして彼女をめぐって「Gifted」として育てることが正しいのか?一人の女の子として普通に育てることが正しいのか?周りの人間たちの様々な思惑の中でメアリーは翻弄されていく。

まず何よりもメアリーが可愛い。これだけで星3つくらい上乗せしてもいいくらい。
そして、天才的な一面と子供らしい無邪気な一面を見事に共存させた演技は本当に素晴らしかったと思う。

そして周りの大人たちの思惑も間違いなのかというと必ずしもそうとは言い切れない部分もある。
フランクは「とにかく普通の女の子に育って欲しい」という願い。
方やおばあちゃん(イヴリン)は「彼女は特別な才能を与えられたGifted。その才能を埋もれさせることは罪だ」と言わんばかりに彼女への英才教育を強行しようとする。
数学の勉強自体は嫌いじゃないメアリーもイブリンの提案に興味は示すが・・・。

本当の幸せってなんだろうか?もっと言えばGiftedっていったい誰の為ものなんだろうか?

イヴリンは娘(つまりメアリーのお母さん)が同じくGiftedだったのに、自分の手からするりとこぼれ落ちるようにいなくなってしまったことがずっと引っかかっていたのだ。
だから次(メアリー)こそは必ずGiftedとして数学の世界で成功させたいという野望にも近いものを燃やしていた。
しかしフランクは何故メアリーの母が最終的にイヴリンの手を離れようとしたのか、その真意をイヴリンに告げる。

Giftedとは誰の為のものなのか・・・。

メアリーには青春を謳歌し、自由に恋愛をし、自分で未来を切り開く、そういう普通の女の子に育って欲しい。
そういってフランクにメアリーを託したのだ。
そう、それは自分がイヴリンの期待に応える為に犠牲にしてきたこと・・・。

何が正解だったかはわからない。
ただ、メアリーの人生にとってはとても大きな出来事だったと思う。
自分が何者であって、そして自分の愛してくれる大人がいて、自分の将来を真剣にみんなが考えてくれたんだから。


「フレッドは鳥をみるのが好き。捕まえたいと思うけど後悔するの。殺すより愛するタイプね」

メアリーがフレッドについて語った何気ない一言。
だけどフレッドを愛するメアリーの優しさが伝わってくる素敵な一言だった。
フレッドも幸せもんだな。
あんないい「家族」に飼われてるんだもん。
dm10forever

dm10forever