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ユリゴコロのRenのレビュー・感想・評価

ユリゴコロ(2017年製作の映画)
3.0
原作未読。予想だが、小説ならもう少しミステリーの体裁を保っていたのではないかと思う。それを期待して観始めたのだけど、ある種の「呪縛と解放」にまつわる人間ドラマだった。

映像表現は褒めたい。R指定になっていない映画の中ではかなり皮膚感覚への痛み表現を頑張っていた。予想以上に血も流れるし、しっかりウッてなる。

今作を大雑把に「洋介(松山ケンイチ)登場前」と「洋介登場後」の前後半に分けて考えたとき、前半の掴みは悪くなかったと思っている。これからどんな不吉なことが起こるのだろう?と高揚させる(高揚しない)エピソードの乱打。特に子役・平尾菜々花の目の演技は絶品で一見の価値あり。佐津川愛美のやつれ演技ももちろん素晴らしい。

と勝手に期待値を上げていたら、後半はかなり偶然とご都合主義が目に余ってどんどん冷めていった。
○○は実は○○でした、の展開が2段階に渡って仕掛けられいたけれども、そのどちらもミステリーとしては弱めなツイスト。メインキャラクターが多くないので先が読み易い、というのもあると思うけど。

生まれながらに背負った呪縛のようなものに囚われている(と思っていた)人が、その呪いから解放されるまでの物語。親子というタテの愛と、恋人・夫婦のヨコの愛が、亮介を中心にして十字のようにどんと迫る。
美紗子の犯す殺人の動機が、前半と後半でガラッと変わっており、不安定だった彼女が人生の中で心の拠り所を獲得していく話としても面白かった、はずだった。



《⚠️以下、ネタバレ有り⚠️》










何かを殺めることが心の拠り所で殺すこと自体を目的としていた前半から一転、後半は息子という新たな拠り所が出来 そのために殺人を犯す。動機の180度転換。

殺人鬼の血が流れているけれど美紗子を殺せなかった亮介。おそらく彼には、血の繋がっていない父親の、理性的で優しい血も流れていたのだろう。実親が殺人鬼である事実は変わらないけれど、その宿命が自分の中にも流れているという呪いのようなものからは解き放たれたのではないか?と思う。

その他、ネタバレ無しでは詳細に語れなかったツッコミどころ
○ 細谷(美紗子)が千絵とトイレで会ったのも、その恋人が自分の息子だったのも本当にたまたまだったのはいくらなんでも....。そこに整合性をつけるべき物語では?
○ ラブホテルで殺害された男とか、サイコパス風の人物が過剰で不必要に高カロリーだった。
○ 美紗子が暴力団員を皆殺しにする展開なら、それ以前の過去パートで彼女が集団を相手に殺戮に及ぶシーンが必要。結果オフィスの血の海のシーンは説得力が無く浮いている。
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