DarkKnightK

アウトレイジ 最終章のDarkKnightKのレビュー・感想・評価

アウトレイジ 最終章(2017年製作の映画)
4.4
「北野映画への原点回帰」

強烈なバイオレンスで我々を魅了してきたシリーズ最終章。前作から5年経っていることもあり、西野(西田敏行)や中田(塩見三省)もドスの効きはいまひとつ(お二方ともに大病を乗り越えての復活なので仕方ないといえば仕方ないのですが)。そう、かつては幅を利かせたヤクザも歳をとり、ヤクザの世界も更に様変わりして証券会社出身の野村(大杉漣)のような輩が花菱会の会長になる時代。そんな時代でも義理立てにこだわる古き時代の”極道”大友(ビートたけし)。今回も子分を変態花田(ピエール瀧の妙演!)に殺され、何もしない張会長(金田時夫)に代わり次々と復讐を始めるが、やがて花菱全体を揺さぶる事態へと突入していく。

前2作のようなバイオレンスを期待すると肩透かしを食らうが(かなりのお客さんが入っていたが、エンディングと同時に席を立ってしまった人も多かった)、今回も騙し騙されの権力闘争は健在で人間ドラマとしても充分魅せてくれた。そして、かつての北野作品のような静から動への突如とした暴力の爆発力があった。

やがて大友は『キッズリターン』以前のような(バイク事故で彼の死生観が変わったと思うのは自分だけではないはず)死にたがりの主人公と同じ末路を辿る。途中、花菱からの刺客を迎え撃つ時に誤って子分を撃ち殺してしまった大友の悲壮感。大友も老いたのだ。その時から大友は死地を求めて彷徨っていたのだと思う。シリーズを通して見れば納得の最期と言えよう。

結局花菱会は生き残るがそれがなんだ。そもそも大友だってクズなんだ。本作唯一の良心とも言える繁田(松重豊)が上司に辞表を叩きつけたことで、この世は腐っているのだと思い知らされるのだ。まさしくシニカルな北野ワールド全開で満足の出来であった。
DarkKnightK

DarkKnightK