えいがうるふ

散歩する侵略者のえいがうるふのネタバレレビュー・内容・結末

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

いやー、清の映画は楽しいな!だんだん分かってきたこれぞ黒沢清!という癖が強すぎる面白さ。ホラーなのかSFなのかコメディなのか・・やっぱり黒沢清そのものがジャンルとしか言いようがない。

突然やりすぎなぐらい画面が暗くなる。ちょっとちょっと顔見えないじゃん電気つけてよ!って何度も言いたくなる。セットの部屋がいちいち変。どこ行ってもしっかりした柱の代わりにやたらと斜交いだらけの謎建築でそれだけでもう頭上注意な不安感が煽られる。GPSやら宇宙との交信機やら、ハイテク機器ほど昭和の怪獣映画を思わせるやたらチープな作りでわざとか?ってぐらいハリボテ感がすごい。車窓に流れる景色はもはや安定の異空間。え、BGMこれでいいの?・・・いちいちニヤニヤとワクワクが止まらない。
何よりも今作品、真顔でやりとりされるセリフの応酬が面白すぎる。ほぼコント。映画館で見てたら笑いこらえるのに苦労したに違いない。

キャスティングがまた絶妙。表情も歩き方も最初から地球人離れしていていちいち挙動不審過ぎる松田龍平を筆頭に、リアル地球に落ちて来た男感が半端ない高杉真宙、真顔で何を言おうとひたすら胡散臭い無精髭の長谷川博己(爆撃された後の怪我演技が白眉!)、最初からぶっ壊れてるあっちゃん、あっという間に手球にとられる人格抜け落ち感が絶妙な満島真之介、死んだ目で愛を語るアンドロイド東出昌大、好々爺ぶりが最初から怪しすぎる笹野さん・・・全員出落ちかよ!てぐらいのハマリ加減。そしてこれほどの豪華キャストを使っても溢れ出るサブカル感をもろとも払拭する長澤まさみの正統派女優的美しさ。なんですかこの絶妙すぎる塩梅は。

そして話はいよいよ怒涛の終盤になだれ込み・・からの、謎のザ・愛こそが全てのメロドラマ展開。これもある意味安定の清クオリティ。ここまで散々混乱させといてからの突然のロマンチスト清発動、だいぶ慣れたけど危うくギャップ惚れしそうになる。いやとっくにしてるのか自分?
映画化に際し戯曲からどれほど脚色されているのか分からないが、きっと原作者と監督の相性がよいのだろう。確かに芝居も面白そうだ。

絶賛と酷評が入り交じる人様のレビューを読むのが興味深いのも黒沢作品の楽しみのひとつ。ここのレビューの中にも、「真治が神父から愛を奪えなかったのは、もともとヤツの中に愛が無かったからでは?」的な視点を述べている方がいて、なるほど!!!と膝を叩きつつ笑ってしまった。まさかそこまでの深読みを見込んでのキャスティング・・・?

ともあれ、なんだかんだで結局このスコア。
しまった、清に「レビュー」の概念を奪われたのかも。