TS

散歩する侵略者のTSのレビュー・感想・評価

散歩する侵略者(2017年製作の映画)
3.6
【内側に迫る危機】76点
ーーーーーーーー
監督:黒沢清
製作国:日本
ジャンル:SF
収録時間:129分
ーーーーーーーー
2017年劇場鑑賞65本目。
タイトルが中々強烈な今作。何の予備知識もないまま見に行きましたのでややびっくり。これ、SF映画なんです。しかも、「宇宙人が地球を侵略する」という誰でも知ってるプロットを用いています。しかし、そのやり方が斬新。言い方は悪いですが、邦画でハリウッドのようなスペクタクルSF映画をつくるのは難しいです。しかし、今作はそのあたりをうまくカバーしています。概念を奪う侵略者。という箇所に重きを置いています。

数日間失踪していた真治はまるで別人になったように妻の鳴海の前に現れる。記憶をほとんど喪失している彼はとりあえず家に戻るのだが。。

宇宙人が一応出てくる作品において、これ程低予算で作られた作品も珍しいのではないでしょうか。いや、終盤には若干の爆撃がありますし、割と豪華キャストなので低予算とは言い難いかもしれませんが、それにしても質素です。
序盤の掴みは非常に良い。なんだこれは。クライム映画なのかサイコパス映画なのか?と思いながら先が気になる展開。中盤からはやや失速しますが、人間に乗り移った宇宙人が、人々の概念を奪っていくというのは面白いです。そして、奪われた概念を失う人間。なかでも「仕事」の概念を奪われた男の末路は中々のものでした。果たして仕事とは、しなければならないからしてるものなのか、したいからしてるものなのか、どちらなのかを考えさせられましたね。

はっきり言って宇宙人に侵略されるかどうかなんてのが今作の重要な部分ではありません。問題なのは、内部から崩壊していく中で一体何が出来るのか、そして何を信じるのかということなのでしょう。ジャーナリストの桜井は一度だけ民衆に、地球に危機が訪れている、ということを告げますが人々は半信半疑。呑気にスマホで撮影をしている人さえいる程です。思えば宇宙人=ネタという図式がいつの間にか成り立っているため、並大抵のことがない限り人々は信じてくれません。ましてや人に乗り移ってるとなると信用されにくいです。

もしかすると、隣にいる人は宇宙人かもしれません。そういう疑心暗鬼を感じさせられる部分は『遊星からの物体X』を思い出しましたが、今作の方がよりシンプルであります。宇宙人らしい姿とか宇宙船なんて一切出てきません。極めて異色なSF映画と言えそうです。

合う合わないはかなりあると思います。くだらなすぎると言われる方の意見もわからないこともないです。ただ、僕としてはちょっと変わった映画としてまずまず楽しめました。
TS

TS