emily

夜は短し歩けよ乙女のemilyのレビュー・感想・評価

夜は短し歩けよ乙女(2017年製作の映画)
5.0
 所属クラブの後輩「黒髪の乙女」に片思いしている「先輩」は”ナカメ作戦”と呼ばれる、なるべく彼女の目につねに留まるように暮らしていた。夏の古本市や文化祭、個性豊かな人たちが織り出す珍道中に巻き込まれながら、外堀を埋めていくが、肝心の彼女に接近することはままならず・・・

 結婚式から始まり、夜の町を練り歩きながら、老人と飲み比べしたり古本市での争奪事件、黒髪の乙女と先輩の目線を切り替えながら、短い時間の枠の中で、人と人との出会いにより繋がっていく珍道中をスピード感のあるシーンの切り替え、ユニークな人物達の動き、絡み、古き良きものと今をミックスさせ、現実と妄想が交差するようなほろ酔い気分を常に纏って、観客を虜にしていく。寄り添う音楽が世界観にぴったり寄り添い、時に唐突で、時にベタで、常にふわふわ夢心地でありながら、しっかりと収まるところに収めていき、強いメッセージ性を残すのだ。

 ラストまで見てはじめてその愉快爽快なあっと言う間に過ぎ去った時間の意味が分かる。アニメーション自体の色彩やタッチのバリエーションが豊富で、目を離す隙を与えない。お腹いっぱいになりすぎたところで、絶品の甘さがラストに漂う。そうして気が付いたら背中を押されている。
一瞬の今を懸命に生きる事。今日が今が一番若い自分である事を改めて思い知らされる。コンパクトにまとまっており、しっかり映画の世界に浸らせてくれ、現実に戻してくれる。唯一無二の世界観。これを知らなくても何もかわらない。しかし知れば心が豊かになる・・・・
emily

emily