グラッデン

アイ, トーニャ 史上最大のスキャンダルのグラッデンのレビュー・感想・評価

4.0
コレが私の物語。

日本でも大いに話題となったトーニャ・ハーディングを巡る騒動も四半世紀が経過。
瞬間最大風速のインパクトも凄かったと思いますが、本作で描かれた破天荒すぎるエピソードの数々には、ハードな展開にも関わらず、変な笑いが出てきました。

また、ハードな内容を重々しく描かない作品の作りも非常に良かったと思います。トーニャ役のマーゴット・ロビーをはじめ、実在の人物に対するキャストの完コピした上で、インタビュー形式で物語を進めることでドキュメンタリーテイストを醸し出しつつ、「第四の壁」をハンマーでぶち壊すような観客への語りかけを多用する物語の回し方は非常に新鮮でした。
そして、フィギュアスケートと五輪を題材にしてるとは想像しづらいほど、登場人物が揃いも揃ってイかれた人しか出てこない、そのクセの強さが際立っていたのも面白かったです。

印象に残ったのは、冒頭で述べられた「トーニャとはアメリカそのものだ」という表現です。『流石にそれは誇張ではないか』という印象も受けていましたが、鑑賞を進める中で、その表現が持つ意味を理解できた気がします。
煌びやかなフィギュアの世界で貧しい家庭で育ったトーニャが、才能と努力で道を切り開き、2度にわたる五輪出場の栄光と転落を経験する軌跡は、まさにアメリカン・ドリームの光と陰を垣間見ることができました。また、型破りな表現と至高の技術で脚光を浴びた彼女に向けられた審査員たちの評価・偏見にもアメリカの中にある隠れた階層の意識が見えてきたと思います。

彼女の生き様は、まさにジェットコースターではありましたが、間違いなくメイド・イン・USAであったかと。