じぇれ

ピーターラビットのじぇれのレビュー・感想・評価

ピーターラビット(2018年製作の映画)
3.8
【正しい子供映画を追究し、自身の信念を貫き通したウィル・グラックに拍手】

鳥たちの美しい歌声とともに始まる本作は、突然ピーターラビットの激走によってブチ壊されます。
これはまさしくウィル・グラックの選手宣誓。
「宣誓!わたくしはー、映画マンシップに則りー、正々堂々ー、人間の汚い部分もー、子供たちに見せきることを誓います!」

以降繰り広げられる、人間とウサギたちの生死を賭けた戦い。
正直やりすぎじゃないかというシーンもあります。
しかし、ウィル・グラックはこう答えるでしょう。
「やりすぎ? 百も承知さ。でも、相手を殺す動機も覚悟もない暴力の方が、よほど残酷なんじゃないか」と。

常識的に考えれば、あの『ピーターラビット』を映画化する時に、こんなバトル映画にしますか?
仮に誰かが言い出しても、全力で否定しますよね。
それでもこの映画は出来上がったわけです。つまり、ウィル・グラックは幾多の反対を押し切ってでも、この脚本にこだわったんです。クレーム覚悟で。
実際、作中でもクレームをネタにしています。

私自身、この作品を幼児に見せるかどうかは迷います。やはり、刺激が強すぎるんじゃないかと。
ウィル流ファミリー映画が正しいのかはわかりません。
しかし、自分の信じる映画を撮り切ったウィルにはスタンディング・オベーションします。

少し真面目に語れば、ここから先は親の問題なんですよ。
・自分の子供がきちんと理解できるか
・子供とディスカッションできる関係か
無理だと思えば、見せなければいいわけです。
映画は強制的に観させられるものではなく、選択の自由がある娯楽なのですから。

さて、そんなこんなで生死を賭けた壮絶なバトルを描いた本作ですが、3幕ではきっちりと”ある行為”の尊さを描き、教育映画であることを証明します。

また、原作者をモデルにしたであろうビアの扱いにも、ウィル・グラックのとんでもない企みが隠されています。
原作レイプならぬ原作者レイプとでも言うべき、原作者を腐す大胆不敵な脚本。
「俺が『ピーターラビット』を正しい子供映画にしてやる!」
ウィルのこの想いだけはしかと受けとめました。
よくやった!
じぇれ

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