シュローダー

犬ヶ島のシュローダーのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.0
待ちに待ったウェスアンダーソンの最新作は、日本へのリスペクトを衒いなく打ち出した作品に仕上がっていた。今から20年後の日本 メガ崎市の市長 小林は、犬インフルエンザの流行を建前に、日本から犬を排除しようと動き始めた。そうしてる内に、全ての犬がゴミの埋立地の島へ島流しにされてしまう。そこへ、一人の少年が自らの犬を探しにやってくる。出会った4匹の犬と、1匹の野良犬。彼らの力を借り、飼い犬探しがやがて社会の革命へと向かっていく… 前作「グランドブダペストホテル」が、フリッツラングの様なヨーロッパ映画のクラシックを志向したとするならば、今作は、まさしく日本のクラシック 黒澤映画の様式を志向している。惜しむらくはそのシナリオが過去のウェス映画程完璧な物では無いという所だが、そんな事が気にならなくなる程、フェティシズムに溢れたストップモーションアニメの愛らしさと多幸感は、必見の価値がある。ウェス映画特有のシンメトリックな画面構成と、レールの上を動くようにダイナミックなカメラの動きは、いつも以上に冴え渡っている。俳優の顔からデザインされたと思しき個性豊かな犬たちの愛くるしさは観ているこちらを癒してくれる。メガ崎市のビジュアルも、勘違いとリアルの狭間の世界を見事に表現した都市としてデザインされている。どこぞのアップライジングの節操の無い東京とは大違いだ。老若男女誰が観ても楽しめる快作。日本人ならなおさら必見。