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夜明けの祈りのRyuのレビュー・感想・評価

夜明けの祈り(2016年製作の映画)
3.8
1945年12月 ポーランド。赤十字で医療活動をしている女医 マチルドの元にシスターが助けを求めてやってくる。修道院へ行くと、そこには苦しんでいる妊婦がおり、マチルドは診察して出産させる。翌日、様子を見るために再び修道院を訪れたマチルドは、そこにはまだソ連兵に陵辱され、身ごもっているシスターたちがいることを知る。

実在したフランス人女医 マドレーヌ・ポーリアックが遺した日記から製作された作品。
信仰と葛藤。キリスト教モノでよく描かれているテーマかと思いますが、やはり妊娠・出産となると子供の命が関わってきますから、その葛藤は強く、苦しいものなんでしょうね。無宗教の身としてはこんなにも苦しい思いをしてるのに何故信仰をやめないのかと思ったりもしてしまいます。そんな中、修道院のナンバー2のシスターマリアの「信仰とは24時間の疑問と1分の希望」という言葉が非常に印象に残りました。苦しくて辛いこともたくさんあるからこそ、その中にある僅かな希望が際立っているのでしょうか。
にしても、院長の歪んだ信仰には怒りと憐れみの感情が湧いてきました。あんな行動を罪の意識なく、むしろ良かれと思ってやっているってのがホント恐ろしい。それでもキリスト教は赦しちゃうんだからなぁ。考えだしたら矛盾だらけな宗教だと思ってきちゃいます。
院長以外のシスターたちは信仰と葛藤に悩みながらも人間らしさもしっかりと備わっています。だからこそ苦しかったでしょうね。そこに現れるマチルド。シスターたちにとって、彼女は一筋の光のような存在だったでしょう。1人の勇気の偉大さが身にしみます。
基本的には重苦しいお話なんですが、ラストはこれぞあるべき姿 だというような光景が広がっており、心が救われる思いです。この映画自体が“24時間の疑問と1分の希望”のような雰囲気を帯びていたように感じました。
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