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A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーのstのレビュー・感想・評価

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存在と時間。夜の星空(宇宙)から昼間の青空(地球)へと切り替わる冒頭シーンからそのテーマを仄めかされる。引っ越し前のベッドシーンやミートパイを食べるシーンなど、極端な同ポジ長回しカットによって「時間」概念を強制的に意識させられる。”ゴースト”化した夫は、魂のみならず肉体ごと抜け殻となり、自分の家に身を宿す。
生活の「繰り返し」のモチーフである「塗装」(=壁を何度も「塗り直す」ことによって別な生活が同じ場所で営まれ続ける)。そして、未来・過去を行き来する”ゴースト”という「存在」。ベートーベンが神へ向けて書いた『第九』は、いくつもの世代を隔ててもなお聴かれ続ける。地球はいつか地殻変動により人類の9割を失うが、『第九』のメロディが新たな感情を生み出し、再興を遂げることもあるだろう。
(人間による)生活は、(人間の)勃興と没落を「繰り返す」ことによって営まれ続けてきた。それは狩猟採集の一家族単位(=「家」)のレベルから、高度文明化した現代の一都市単位まで貫徹する。「家」にはそれぞれの「歴史」(=「存在」と「時間」のあり方)がある。愛する者を思って書いた「曲」も、愛する者によって書かれた「手紙」も、ある「歴史」の中での「地殻変動」において、それが新たなる「歴史」を生み出すトリガーにもなるのであろう。
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