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パラサイト 半地下の家族のstのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
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2回目。やっぱ恐ろしいほどの怪作。全編に渡って全てが「象徴的」であり示唆的。予想の一歩先を行く脚本もそうだし、ポンジュノの変態的こだわりに追い付く制作サイドもヤバすぎる。あんな豪邸をセットで作ろうと普通思わないし、2階部分CGにするとか別テイクのカットをポストで合成処理するとかハリウッド並みに気合い入ってるよなあ。

垂直構造のレイヤー(地上>半地下>地下)から連想される社会・経済格差への直接的な言及というのはもちろん第一にあるだろうけど、「寄生(性)」への批判と奨励もあるはず。資本主義を崇拝(リスペクト!)する金持ち夫は本当の意味で妻を愛せず、かたや半地下や地下で暮らす夫婦や家族は互いに愛し愛される関係があった。一方では「時計周りに」なんていう乾いた愛撫しか無い夫婦には息子や娘とも距離があったことに対して、キム家はつねに一体で「計画」をするし、地下では絶えず食糧とコンドームが消費される。「(愛に)乾いた金持ちであるよりは、(愛にも洪水にも)塗れた貧民たれ」とまではいかないにせよ、それに近いようなメッセージ性も感じる。金に寄生するのではなく、人(家族)に寄生せよ、と。

韓国は通貨危機以降の圧倒的な成り上がりによって貧も富もテーマとしている(ほどに経済的・文化的なレベルが上がっている)が、日本は「万引き」する一家族という片面にしかスポットを当てられていない(2018)というのがなんか如実に2023年の現状をも反映しているような気がして悲しくなるな… 少なくとも日本では本作みたいな製作は実現されないように思う。そもそも比べるものでもないけども。なんか色々頑張ってほしいし、頑張ろうと思った。
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