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ドライブ・マイ・カーのstのレビュー・感想・評価

ドライブ・マイ・カー(2021年製作の映画)
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公開当時ぶりに2回目みてもやっぱハイコンテクストすぎるなこれは… ワーニャ伯父さん(戯曲)、音の語り、登場人物それぞれのパーソナルな物語が少しずつ重なっては、ずれていくような感じ。"ごった煮"村上作品の"煮え切らなさ"をさらに凝縮したような感じがあってとても良い。長い小説苦手だけど映画なら楽しめる。そして常に新たな展開を見せながらも話が奥深くに進み続けていて本当にすごいし、脚本の教科書すぎる。

脚本以外のところで言うとカラックスみたいなキメキメの画も多かったな。1カット目の音のシルエットもそうだし、タバコをサンルーフから突き出したり線香に見立てたり、稽古場・家福の家・車内での鏡(/姿見/バックミラー)越しのショットとか。あとは濱口作品に必ず入ってくる超ルーズショット。美しい景色をバックに走る赤サーブ900カッコ良すぎ… サーブ900は年式謎だけど地味にキーレスでパワーウィンドウだったり、15年故障なしが眉唾だったり、サンルーフはあのタバコの1シーンしか開けないんだっていうのだったり意外(?)な点が多かった。あとは音が非常に良い。フリスビー返した時のお姉さんの声、あんな綺麗に拾える?

脚本すごいとは言え個人的には「ミサキとの心の距離が家福の車の座席位置に表れてる」とか「ミサキは家福にとって娘の分身(同じ23歳)でもある」とかそういう要素にはあまりグッとこなくて(もちろん話の整合性を担保する点では非常に重要だと思うが)、むしろ変態的な脚本を書きつつもひたすら時間芸術をやっているような感じ(具体的に言うと一緒に「ドライブ」をしているような感覚)が特に刺さった。絶対に映画館で観るのが良い(最初観た時途中で寝たけど)。仮にアカデミー賞取れてなくともめちゃくちゃ好きな作品です。
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