烏丸メヰ

血のお茶と紅い鎖の烏丸メヰのネタバレレビュー・内容・結末

血のお茶と紅い鎖(2006年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ストップモーションによって描かれたダークメルヘン。
起承転結がかなり分かりにくく、間の感じやデザインの独特さもあるので、かなり好き嫌いは分かれると思われる。
万人受けするものではないが、それでも私は強烈な愛おしさと美しさを感じるし、確実な魅力と芸術性を持っていると言える。
(私はシュバンクマイエルのファン、かつアート一辺倒映画嫌いだが、この作品はかなりすんなり受け入れられた)


白ネズミの貴族達は、褐色の毛と嘴を持つ“素朴な生き物”に人形づくりを依頼した。
ところが、出来上がった人形を“生き物”達は気に入ってしまったらしく、代金を渡しに来たネズミ達を突っぱねると、まるで崇めるかのように人形を高い所に飾りつける。
その夜、ネズミ達が現れ人形を持ち去ってしまい、“生き物”達は人形を奪い返す旅に出発する。

不気味さと可愛らしさ、意味の分からなさとメタファーの匂いに富んだ独特のシュールなデザインやストーリーと、ストップモーションの持ち味であるカクつきやギクシャク感という“作り物感”からくる非現実的さが幻想性としてかなり上手く噛み合っており、それらはチープさ以上に「雰囲気」となって作品を形成している。


白ネズミは白人、“素朴な生き物”は被侵略側の有色人種のメタファーなのだろうか。

豪奢な衣装と金貨を持つネズミ側に描写される、死や殺戮のイメージがかなり印象的だ。彼らが飼っている?髑髏の頭をしたカラスのような鳥や、がぶ飲みしている血のようなお茶、そして、“素朴な生き物”の元では生き生きとした笑顔で咲いていた花が、ネズミの元では髑髏の顔でいる。
白ネズミは「豊かな者、奪う者、血に染まった者」であり、“素朴な生き物”は「土着の者、奪われる者、新たな価値観をもたらされる者」であるように見える。

これらストーリー内部の一連の流れにくわえ、人形と同じ顔を持つ女性がティーポットに卵を入れる実写のオープニング。
そのお茶が川となり?卵が“素朴な生き物”の元に流れ着き?異形の鳥となり死ぬストーリーを挟んで、その死体が葉にくるまれ弔われた形で、冒頭の女性のティーカップに戻るエンディング。
死体は葉っぱの中で、輝く宝石と化していた。

耽美でありつつ、客観的な視点から“何か”を捉えた流れるようなストーリーテリングには表す言葉も見つからないほど小さく、しかし重く圧倒される。

「血も水も巡り巡る 私の肌の下で 大地の下で」
烏丸メヰ

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