るる

サスペリアのるるのネタバレレビュー・内容・結末

サスペリア(2018年製作の映画)
2.9

このレビューはネタバレを含みます

オリジナル未見。わかりそうで、わかんなかったな…? こういうカルトっぽい作品にピュアにハマれたら良かったのかな、と知人の顔をいくつか思い浮かべるなどした、魔女やアングラへの憧憬はあれど、ゴスにはピンとこねえし、カジュアルにアングラを楽しむことができないんだよな…グロ苦手だし…難儀…

フェミニズムが流行するいま、魔女を題材にした作品がリメイクされた、理由はわかるんだけども、
フェミニストを魔女として描くことが、もう、古くない?? 女たちの集団に、得体の知れない魔女のレッテルを貼って創作する行為そのものが、連綿と続く男性の権威主義に依ってないか??という気もして。

ピナ・バウシュのドキュメンタリー映画なんかを連想しながら見たので、ちょっと引っかかったな…
世代を超えた女たちが普通に、生き生きとして、仲良くやってる姿を映し出しているのが新鮮だったぶん、
裏では黒魔術の儀式をしたり男をいたぶったり仲間割れしたりしてドロドロしているんだろうという描き方が陳腐に思えたし、女性ダンサー集団への明確な侮辱じゃないか? という気がして、うーんんん

ナチスによる強制収容を魔女狩りとして描くのは、なんか、いいのか?というか、ド直球の比喩表現を見たという気がして、そうかあ、現代にも魔女の生き残りはいたし、いるんだな、と思って、いや、やっぱり文脈が違うんじゃない?とか、

色々駆け巡ったな…抽象と具象のバランスが悪い感じはした。

暗黒舞踏については、映像で少し見たことがある、日本で有名なダンサーといえば、あのひとだよね、程度の知識なんだけど。
でもまあ、あんな感じだよね…コンテンポラリーダンスといい…たぶん、だから、免疫があったぶん、そこまで異様さは感じなかった。

ある種の踊りはシャーマニズムにも例があるようにトランス状態に陥りやすいというし、心酔する先生がいる環境で、カルト宗教みたいな集団生活してたら、下手すると意識も感覚も思考も思想も言動も身体もおかしくなるよね、ってな感じで…
ダンサーってやっぱり自分の心身に向き合うぶん、下手するとスピリチュアル系(魔術)と密接だし、ヨガみたいに健康的にポジに持っていくならともかく、ネガに落ち込むとヤバいんだろうなという気がしたな…

しかし、とんだ死の舞踏だったな? スタンド攻撃というより念能力だったな…鉤十字の形に折れ曲がった身体には苦笑。

こういうのを逃げ場のない場所で見たくなくて、映画館で観るか迷ったんだけど、うーん…グロは手をかざしながら見て、途中、そうか瞼を閉じれば見えなくなるじゃん、と気付いたんだけど、いややっぱり全く見ないのは違うし、と指の隙間から見たんだけど、なんというか、悪趣味だったな…?

生理的嫌悪で気持ち悪くなるギリ手前…スタイリッシュさと謎の陳腐さのアンバランス、サングラスをかけた肉塊、なんだあれ

序盤の、スピード感ある不穏なカット割りは面白くて、六章と少し、と章立てを最初に教えてくれたおかげで、長い、でも、もうすぐ終わる、と確信を持って見られたのはよかったんだけど。

悪夢を見ているとき寝室に差し込む謎の光の揺らめき、あれだけやたらクオリティ低くなかった? なんだったんだ、あの演出

精神科医のおじいさんに好感を持つことができたので、
女の話を嘘だと決めつける、お前のせいで!と直接的に罵る台詞は鋭く響いて、ナチスから逃げられなかった女たちの存在が浮き彫りになるとともに、悪夢の予感にめまいがして、
因果応報は悲哀につながり、最後には、助かってよかったね…と思ったんだけど。

彼女は、どうして彼にだけ赦しを与えたんだろうな? 罪の意識を忘れさせる、なかったことにする、って最大の赦しだよな、この場合、ナチスに加担した罪をなかったことにしちゃってるわけだけど…いいの? フェミニストと魔女とホロコースト被害者を重ねてしまったことによって、そういう文脈が生じてしまったように思うけど、はたして意図してのことなのか? と思ったりして。

あれだけ悪趣味にやるなら、男を許さない、理不尽に男を殺す女を見せてくれたって良かったんじゃないか、そういう悪趣味、後味の悪さでまとめてしまったほうが、収まりがいい物語もあるんじゃないか、と思った、どうせなら、フェミニストのミサンドリーを批判してほしかった気持ち。

『ニンフォマニアック』のラストはだから、あれしかなかった、あれで良かったんだと思う。ラース・フォン・トリアー監督、私が彼の作品を好きなのは、女の殉教者、求道者をきちんと描いているからだなと気付いた。

最後の最後でよくわからなくなったというか。首を切られても生きてるあれ、なんだったんだあれ、笑っちゃったよ。

しかし、ティルダ・スウィントンがいる時代に生きているからには、彼女の魔女役はもっと見たいと思ったし、いまの年齢のティルダ・スウィントンに魔女兼ダンスの先生をやらせようと思いついたひとは慧眼だったと思う。あの長い髪、黒いドレスの美しいこと! タバコ吸う彼女たちを見られたのはよかった。

好きだった部分あるからこそ、戸惑う。なんだったんだ。
るる

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