グラッデン

海辺の生と死のグラッデンのレビュー・感想・評価

海辺の生と死(2017年製作の映画)
3.9
戦時中を描いた作品とは思えぬほど静寂に支配されてる空間に驚かされました。

それだけに、鑑賞を振り返ると音に対する反応はいつもより過敏になっていたと思います。セミの鳴き声、風や波の音が響き渡るとともに、中盤以降に耳に入ってくる(ほとんど姿を見せない)飛行機と爆撃音に対する拒絶感も強く感じました。

また、視覚的な部分でもスクリーンに展開される鮮やかな色彩にも目を奪われました。作中に登場する様々な花の色、心境の変化に連動するようにコーディネートされた主人公の衣装など、やはり戦時中を描いた作品には珍しい、多彩な色の変化を見られたと思いますし、対照的に夜の海辺の漆黒も強く印象づけられました。。

そして、主演の満島ひかりさんの「怪演」だけでは言い表せない物凄い演技には衝撃を覚えました。
インタビューを拝見すると、自らのルーツを持つ奄美を舞台にした作品であるということもあり、製作者と島を繋ぐ役割を意識していたことを強く感じました。満島さんの生々しさのある演技には役柄に自我を織り込まれたような、本当に強烈なインパクトを覚えました。

想定外に様々な部分で圧倒される作品でした。また、『この世界の片隅に』もそうでしたが戦争映画の描き方としては日常にフォーカスした作品は今後も増えるかもしれませんね。