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テオレマのblacknessfallのレビュー・感想・評価

テオレマ(1968年製作の映画)
2.4
ローティーンの頃に観て以来。当時は深夜にヨーロッパの文芸映画というかそれを装ったエロ映画がTV放映されてたんだよ。これもそんな風情だったんでおっぱいやエロいシーン目当てに観た。「これ多分、そういうのだ」🤩と期待して。しかし、お目当てのそれらがまったくない上に内容がまったく理解できず、「ちっ、とんだ喰わせもんだったぜ」( ・ε・)と勝手にガッカリし騙された気になった記憶しかない。
あの頃はパゾリーニも知らなかったし『ソドムの市』も観てなかった。それを通過した今観るとどうなのか?と思い再鑑賞。

とりあえず意図は分かったよ。パゾリーニらしいね。
大工場を経営するブルジョア家族のもとに妖しい魅力を持つ精悍な美青年が訪ねてくる。
経営者の男、その妻、息子、娘、家政婦、家の者全員が彼に魅せられよろめく。美青年が家を去ると全員の精神のバランスを失い家族が崩壊する。

まず、女性陣だけじゃなく男性陣もよろめきまくるのはパゾリーニがゲイだからな。
息子が隣のベッドで眠る美青年に発情し理性と劣情の激流に呑まれ恐る恐る美青年のシーツをまくるシーンの淫猥さよ。パゾリーニの気持ち(性癖)が爆発しまくってる💥 この美青年の撮り方もヤバい。やたらと股間にフォーカスするし股を広げて座るポーズが多い。まあ、そういうことなんだろうな。
妻も娘も家政婦も辛抱堪らなくなって美青年に迫るんだけど、女性のそういうシーンは大雑把で精細に欠けてる。興味ないんだろうな。その大雑把さが凡庸なエロに転化されていてメロドラマ系のAVのような卑猥さがある。これはこれでおもしろい。ドラマ系のAV専門の某レーベルを思い出した。

でもドラマ系のAVと違うのは美青年が去った後の家族達の精神の崩壊、堕ちる様をじっくり描いてるところ。美青年はけっこう早々に去る。半分以上、家族達の崩壊模様に割かれるからこっちが本文なんだろう。
ここでカトリックであり熱烈な共産主義者であるパゾリーニのアンビバレントな人間性が炸裂する。美青年を失ったショックで家政婦は食欲失いトランス状態になり空中浮遊をする。このシーン、画的にもインパクトあるけど、カトリックにまたにある修道女がトランス状態になり神の祝福受けた聖女に奉られるエピソードに掛けているところがショッキング。
経営者の男は人生の虚無に襲われ街中で全裸になり放心した後に工場の経営権を労働者に譲り渡し全裸のまま荒野を彷徨い哄笑をあげる。
これは純粋に資本以外に価値を持たぬブルジョアの空虚への皮肉とプロレタリア革命の讃歌だと思う。

要するにゲイ、カトリック、共産主義、それぞれが反目し合う価値を内包したパゾリーニの内面を美青年を媒体にぶちまけた魂の告白。
そういうことを知って観ると所々ハッとさせられるけど、まあ、でも、つまらないな。
『ソドムの市』のイメージが強すぎるからかも知れないけど上品に纏めてんじゃねぇよ、て気持ちなった笑

『ソドムの市』みたいに露悪過ぎて思わず笑っちゃうとこがなかったのが不満だよ。家族全員、美青年にイカれちゃうなら飼い犬も美青年に発情してハウンハウンと交尾を迫るシーンが欲しかったな🦮

あと、ないと記憶してたおっぱいだけどあった。娘と美青年のラブシーンで一瞬チラッと。これが本当にさらっとお座なりに撮ってるから印象に残らなかったんだよ。マジで女性に興味ないんだな。
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