マダム

マダムのマダムのレビュー・感想・評価

マダム(1957年製作の映画)
4.0
もはや戦後ではなくなった日本は高度成長の波に乗り、劇中では世相を映したモーレツサラリーマンが景気よく会社のカネで飲んでいる。ポスターに「夜ごと夜ごとの酒と男、切なくも女ごころが求めてやまぬ愛情のゆくえ!」というキャッチが踊っているように、さほど深刻でもないどこにでもありそうな娯楽作品といった様相であった。

しかしマダムが観る「マダム」の見どころはそこではない。そう、この作品の真骨頂は矢田(というか織田作)のボンクラっぷりにあるのである!

矢田(というか織田作)役は金子信雄。えっ、守山親分?と思うだろう?マダムも思った。心配だった。ところが守山親分の情けない織田作っぷりが大変素晴らしかったのである。

昭子が知り合いの女将さんに身の振り方を相談しているところへ守山親分の織田作が登場する。痩せて背の低い男が袴に帽子といった出で立ちなので、一見ちんちくりんな金田一耕助みたいで「誰?これが織田作?」と一瞬ガッカリしたが、しょんぼりして「追い出されて、来たん・・・」と甘えるような声でセリフを言った途端、もう親分は織田作だった。

「逢いたかった。別れたときから、ずっと逢いたかったんや」と告白するシーンは白眉であった。このセリフは織田昭子の回想録そのままだ。これこそ織田作だと思った。こんなに愛しく思える男は他にいないだろうと思うほど、織田作だった。

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