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メアリーの総てのいののレビュー・感想・評価

メアリーの総て(2017年製作の映画)
3.7
『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』の著者メアリー・シェリーが傑作を世に生み出すまでの物語。サウジアラビア初の女性監督ハイファ・アル=マンスールの作品ということで、特に終盤は、監督が今作に込めた思いがセリフでもたくさん込められていた。生まれた直後には母がおらず(出産を機に亡くなる)、また、自分が生んだ子が幼くして亡くなるといった、辛い死を経験。それは彼女の心にずっとある。また、熱烈ジャンプしたのかどうかはわからないけど、駆け落ちした詩人の男性パーシー・シェリーには何度も裏切られる。けど、それも自分が選択してきた結果だという姿勢がメアリーにはある。


絶望や哀しみを抱えていたからこそ、彼女が編み出した“怪物”の抱える孤独や、“怪物”が博士にふれたかったのに拒否られた絶望などが、読んだ人の心を打ったのだろうと思う。初版は1818年(そのときメアリーは十代)、女性の名前では出版できなかったことや、同時期『吸血鬼』を書いたジョン・ポリドリも、作者とは認められずバイロンの名で出版だったことなど、出版するにも差別や格差の問題が存在したことも示される。


『フランケンシュタイン』誕生秘話も含めて、とても面白い内容だと思うのだけれど、正直に申し上げれば、主役がエル・ファニングだから最後まで観たけれど(しかもわたしはシエスタしなかった!)、全体としてメリハリに欠け冗長気味だったように感じます。今後、メアリー・シェリーに関する映画が数多く生まれても良いと思う。メアリーの母は、フェミニズムの創始者(or先駆者)で、父は無神論者&アナキズムの先駆者だということで(wikiによる)、その物語も観てみたいです。




メモ
・メアリーの父ウィリアム・ゴドウィンを演じたのはスティーヴン・ディレインで、GOTではスタニス・バラシオン

・イザベル・バクスターを演じたのはメイジー・ウィリアムズで、GOTではアリア・スターク

・バイロンの主治医で「吸血鬼」の著者ジョン・ポリドリを演じたのはベン・ハーディで、『ボヘミアン・ラプソディ』ではロジャー・テイラー役


*メアリーの父ゴドウィンと、メアリーが寄宿?したスコットランドのバクスター。これを合体させた「ゴドウィン・バクスター」は、『哀れなるものたち』でデフォーが演じた名前だったことを理解した。




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〈追記〉2024.02.01

メアリー・シェリー[1797-1851]
イギリスの女性小説家。急進的自由主義者の父ウィリアム・ゴドウィン、女性解放を唱えた思想家の母メアリー・ウルストンクラフトのあいだに一人娘として生まれる。出産後数日で母は他界し、継母に育てられる。1814年、当時のイギリスを代表する詩人シェリーと出会い、'16年に彼の妻が亡くなると、正式に結婚。'22年の夫の死後は相次ぐ子どもの死や経済的困窮などに見舞われる。夫の死後の旺盛な執筆活動は、生活費や子どもの学費を得る目的もあった。

以上、
シェリー『フランケンシュタイン』光文社古典新訳文庫、2010年
カバーそでの説明より、文言を一部修正して記載しました。
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