あもすけ

孤独なふりした世界でのあもすけのネタバレレビュー・内容・結末

孤独なふりした世界で(2018年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

みんなが死んでしまう前のデルがどんなだったかっていうのは、はっきりとは描かれないけど、今の彼のひとつひとつに触れながら、これまでのことを想像するのが、今の彼の心を想像することにも繋がって、誰かと関わるというのはそういうことなのかもしれない。

孤独を感じるかと聞かれたデルの、町の人間が生きていたときに感じた、という言葉が、それからの彼に触れれば触れるほど、最初に聞いたときの印象からいろんなものが削り落とされて、彼の形に近づいていくような感覚。

ひとりで町の家々を順番にまわって掃除するのは、単純に綺麗にしていくということだけではなくて、死体を埋葬しながら、一軒一軒そこに生きていた人の痕跡を集めていくことでもあった。彼が働く図書館は、人の生きた過去の集積そのもので、町中に放置されたまま中途半端になってしまっているひとりひとりのことも、ちゃんと過去にしていく。そしたら終盤に言われた、同じ、というのはやっぱり違う。

そしてそこで今もデルの生活は続いている。やり方のひとつひとつに彼なりのルールがあって、町を片付けながら生きる糧も調達している。電池を交換する手元に寄った場面とか、なかなかフタが嵌らなくてめっちゃガチャガチャ音立ててる感じ超好き。静まりかえった夕暮れに、大きな窓を向こうにして食事をする音、そういうのがたまらなくなる。

そうして整えていたものをグレースが大胆に乱すのも、でも別にグレースはそんなにとんでもないことをしてくるわけでもなく、グレース自身がむしろ、失敗しないように、と気をつけながらのところもあって、それであんなに乱れてしまうのがすごく良かった。全然乱され慣れてなかった。そして、デル自身もグレースを知らずに失敗して、乱して、傷つくし、傷つける。

そういうひとつひとつの向こうに、なんとなくデルの感じていた孤独が見えてくるような気がした。そして自分にも分かる感じしてしまった。終盤のあの場所で、グレースとデルが車から眺めていた人々に感じたものよりは、まだ知っていたから体温はあったけど、それでもあのスローモーションに近いように思うし、知らなければ知らないほど、主観ではあんなふうに見えてしまって、でも悪い人たちというわけでもない。そして、そういう感覚にキツキツに閉じ込められるような物語ではなかったのがもう。知らないから分かんないけど別に知りたくもないし関係ないわっていう、分かんないけど知りたいからもっと聞かせてよっていう、綺麗に掃除した町を汚して、ぶん投げて窓を割って、乱された生活と心は求めだして、出会ってすぐのグレースの質問攻めがどうのっていう場面から思えばラスト、グレースの言葉を待たないうちに笑ってしまったくらい好きすぎ。聞かなくちゃ分かんないけど、聞かなくても分かるから、聞く。そんな軽さと、そんな軽い質問をデルがしてるー!と思ったら嬉しくて砕けた。
あもすけ

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