エイデン

イット・カムズ・アット・ナイトのエイデンのレビュー・感想・評価

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年老いたバドが荒い息を吐きながら苦しそうに悶えている
ガスマスクを付けた彼の娘サラは悲しみながら謝罪し、息子トラヴィスと抱き合う
サラの夫ポールは冷静にバドを手押し車に乗せると、トラヴィスを連れて森へと運んでいく
穴の中にバドを寝かせたポールは、謝罪の言葉を告げると銃で彼を射殺し、その遺体に火を着けて焼き尽くすのだった
その後 家に戻った一家には重苦しい雰囲気が立ち込めていた
サラはポールに対しトラヴィスに見せるのではなかったと呟き、ポールは見せる必要があったと返す
それを2階で聴いていたトラヴィスはその顔に影を落としながら、愛犬スタンリーと眠りにつくのだった
その夜 ポールは、誰かが家にいるとサラに起こされて目を覚ます
外に通じる赤い扉は誰かが入ろうと試みて音を立てており、スタンリーが警戒して激しく吠えていた
一家はマスクを被り、ポールが銃を構えて待ち構えていると、扉が破られ銃を持った男が1人現れる
とっさに銃弾を放ったポールに驚いた男は尻餅をつき、何とか武装解除に成功する
ポールは気絶させた男を中に運んでサラに見張らせ、周囲を探索するが仲間はいないようだった
翌朝 ポールとトラヴィスは外の木に男を縛り付け、壊れた扉を補修する
その日は口を塞いだ男の声にならない叫び声が響き渡っていた
翌日 弱った男にポールは正体を問い詰める
男はウィルと名乗り、誰もいないと思って水と日用品を漁ろうとしていたと語る
彼は80キロ先の廃屋に妻子と住んでいたが、水が切れてしまったらしい
ウィルは水と自分達が飼っている家畜を交換してほしいとポールに取引を持ちかける
サラにそのことを報告したポールは、どうするべきか議論を交わす
取引内容は魅力的な一方でポールは半信半疑で、サラは妻子おり皆感染していないのであれば安全のために連れて来るべきと語る
議論の末 ポールはウィルを連れて彼の妻子を迎えに行くことに決める
途中 銃を持った男達に襲撃されたものの、2人は協力して男達を射殺
しばらくしてポールは、ウィルとその妻キム、そして幼い息子アンドリューを見事に連れ帰るのだった
ポールは、夜は外出しない、2人組で行動する、食事は共にとる、夜は赤い扉をロックするなどのルールを説明すると、2組の一家は共同生活を始めるが、“感染”への恐怖は密かに忍び寄っていた



暗闇に潜む静かな恐怖を描いたサイコ・サスペンス

批評家から絶賛の嵐と聞いたので不安半分に観たけど面白い
本作は何が起こったのかわからない世界観というのが特徴的
“感染”なんていうセリフを拾い集めると、ようやく夜にやって来る何かによる感染で、文明社会が崩壊した世界ということがわかってくる
ぶっちゃけ考察厨の出番が無いほどに世界観については謎が多い
この手のアポカリプスな映画の人類文明がどんな経緯で衰退したのか聞くの大好きマンなので、そこは少し残念

じゃあ何を描くかというと人間というわけで、同居を始めた2組の家族の心理を生々しく描いたサスペンス具合が面白い
もちろんただの同居というわけでなく前述の世界観なので、感染の不安がつきまとっている
検査はしたものの・・・とか、もしかして自分の家族を狙っているのでは・・・とか、何の根拠も無い不安が家族を変えていく
人間は社会性を営む生き物で、他者を受け入れる寛容性がその中にあるわけだけど、それが失われた時 家族を守ろうとして牙を剥き、残虐な手段にも手を伸ばす
不寛容による獣性への回帰ともいうべきモノがとにかく恐ろしい

この手の人間怖いってテーマはホラー映画でも見られるわけだけど、本作が大きくそれらと異なるのが、恐怖の対象が曖昧なままでも恐怖は成立するというところ
例えゾンビが現れなくても、人は狂気に落ちることができるなんていう人の心理に真摯に向き合う嫌らしさがあるのは製作したA24らしさが出てると感じた
万人ウケはしないだろうけど、こう来たかと膝を打てる怪作なので、気になる人は観ましょう
また天才がポスター作ってるので本国版ポスターもよかったら検索してね
エイデン

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