きゅうげん

アラーニェの虫籠のきゅうげんのネタバレレビュー・内容・結末

アラーニェの虫籠(2018年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

廃墟のような異形の団地……。
乳母車を押す謎の母親や不気味な老人……。
そして街には女性を襲う黒ずくめの殺人鬼……。
さらには旧日本軍による人体実験の過去……。
なにより生理的嫌悪を煽る、蠢く蟲たち!

『童夢』じゃね?
ジャーロ映画じゃね?
『トワイライトシンドローム』じゃね?
『バイオハザード』じゃね?
巻き戻しって『スーパーマン』じゃね?
……と、一喜一憂しながら楽しく観ました。
虚無的に圧倒する巨大建築物をはじめ、画的な素晴らしさもさることながら、ワケ知り顔で登場する識者がポンポン退場してゆくのが、個人的にナイス。

「蟲に関する祈祷師です。だからこのお守りは効きます」ってのも、思い切りが良くて好感が持てます(ホラー的にOK)。
しかしそれとは方向性の異なる、“操り人形っぽいダンス”とか“噂を語る場としてのインターネット”とか、(リアルにしてもファンタジーにしても)話の推進力として説得力に欠ける要素が、展開に片手落ちな印象を与え、クライマックスに至る幻想性を高めきれてない感じがします。
前者はフォローの掘り下げ不要だけど、後者はキャラクター的にもストーリー的にも掘り下げが重要なんです。
また、真相へ迫る具体的なサスペンスが一切ないまま、奈澄葉を絡めて主人公のパーソナルな問題の克服をメインに……と思ったら蟲アポカリプス!なオチには、ミクロな話とマクロな話との食い合わせの悪さを覚えます。

あと公式HPで「ネタバレ考察!」みたいなのをやるのは、如何なものかと……。

ただ作品内にあふれるホラーのエッセンスは、さまざまにフェティッシュをくすぐるものでした。
とにもかくにも、最新作へ期待がふくらみます!