金柑

ナショナル・シアター・ライヴ 2017 「深く青い海」の金柑のレビュー・感想・評価

4.6
芝居を、見た…!という充足感

今回は本当に映画ではなく芝居を観たなと感じました。ほら三文オペラとか役者が完全にカメラ意識してたから。いやうんパッと思いついた例がこれでした
ラストが舞台全体を映す中にヘスがぽつんといる構図でそのまま暗転して最高!と思いました

美術と照明が凄すぎて慄きました。2階より上…怖すぎ…絶対怖い…
壁やドアが透けている演出、単純に役者が見えるようにかなとか思ってたんですが、幕間の演出家インタビューで「常に他人の目に晒されている意識」といったことを仰っていてなるほどな…!と。他人、家の中の壁のこちらと向こう側ですら完全に隔てることはない、一人にはなれない。

一番ウッてなった場面は電話とミラーさん。ウッ…

怒ったり笑ったりころころと不安定なヘス。と、彼女を取り巻く人々。
そう、メインはフレディとビルなのだけど、彼らもあくまで彼女を取り巻く人々の一員なのだなと今は思います。
大家さん、隣人、…あなたはあなたにしか、私は私にしかなりえない、といったような手紙の文言、どこかで聞いたことある気がした(何かの朗読だったか)けど、あの一連の文章がすべてを貫いているようにも感じました。
本人としては気を利かせたつもりで励ますウェルチさん、最後まで彼女を気にかけて優しい言葉をかけるミラーさん(泣いた)、あたりは如実。

簡潔極まれば三角関係でごたつくお話、ってだけなのだけど、それでこんなにも魅せられて食い入るように観てしまう不思議。いや不思議で終わらせてしまうのは勿体無い、、
でもやはりこれは演劇だからこそだよなとも。
「芝居を観た」って表現を度々使ってしまうんだけど何を以ってそういう言い回しなのか自分でも分かるようにしておきたいな。
そしてやはりこれは芝居でなければこんなに集中して観られないだろうな。(トムヒが脳裏を過る)(映画版は見たことないけど)
金柑

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