たけのこ

ウィンストン・チャーチル /ヒトラーから世界を救った男のたけのこのレビュー・感想・評価

3.0
チャーチルの人物像に最期まで共感できませんでした。自分の感情を抑えることのできない癇癪もちの老人としか思えず。現実的な解決策を模索するハリファックスの方に肩入れしてしまいました。

一国の運命を左右するような高度な政治的判断を、たかだか地下鉄の一車両に乗り合わせた一般市民の声を一区間のあいだ聞いただけで左右されるような人物を私は政治家として信頼しない。史実のエピソードであるかは知りません。そりゃあ自分の国の指導者が目の前に現れれば、それを意気に感じて勇ましいことを言う人もいるでしょう。そういうことを客観的にとらえられない程度の人間なのか?

ラストの演説が素晴らしいという評判を聞いていたのですが、議員からの賛同を得られなかった就任当初の演説との違いが正直分かりませんでした。英語が分かると違うのかな?
逆に言えば、就任当初の演説も立派だなと思って観ていたのですが、あの内容でシラケていた議員たちが、ラストの演説では絶賛していた理由が分からず。平和に触れずに抗戦一方という点では同じだと思うのだけど。

敗色濃厚な戦況にもかかわらず、一時的な熱狂に身を任せて世論をアジり、抗戦への道へと突き進むチャーチルの姿は、敗戦国日本の軍部と何ら変わらず、政治家としての評価に値しないと感じました。連合国側の勝利をもって英断と評価するのは結果論に過ぎないのでは?

本作に限らず、史実ものは好きではないですね。作り手側の「こう見せたい」という主観が強すぎて。坂本龍馬とか西郷隆盛とか、歴史ものの小説はいっぱいありますが、「お前はその会話聞いてたんか?」と作者に問いたいし、それを読んで感動している読者も理解できません。その点、ドキュメントに徹したイーストウッドのパリ行きは良かったです。

タイピストが個人的な感情でタイプの手を止めてはいけないと思います。
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