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ファースト・マンのmueponのレビュー・感想・評価

ファースト・マン(2018年製作の映画)
3.6
「ラ・ラ・ランド」や「セッション」を手掛けたデイミアン・チャゼル監督の最新作『ファースト・マン』。人類が初めて月面に降り立ったアポロ11号、ニール・アームストロング船長の半生をライアン・ゴズリング主演で描く。

基本的に史実が元になっているため、SF宇宙映画のようなドラマティックな展開が起きるわけではありません。起こるのはただただ目の前の現実であり、挑戦する宇宙飛行士の生き様が目の前に迫ってくる・・・そんな映画です。

だから「ラ・ラ・ランド」のような展開を期待してしまうとちょっぴり肩透かしを食らうというか、あまりにも静かで単調で情緒的な作品に驚きを隠せませんでした。

この作品のカメラワークの特徴として、とにかく人物までの距離が近いということがあげられます。

常に主人公視点か、もの凄い間近で対象人物を捉えているため、いわゆる遠巻きからの客観的視点というものがほぼ存在していません。

なので、ある意味での緊張感というか空間の圧迫感を感じざるを得ない作りであり、ほとんど言葉を発せず、表情のみで表現するライアン・ゴズリングの演技力は凄いの一言。

ニール・アームストロングという人物の生き様をスクリーンを通してそのまま体験出来るという意味では、クリストファー・ノーラン監督の「ダンケルク」の作風に近いものを感じました。

それにしても人類初の月面着陸という物語は、これが生まれる前の1960年代にあったということが信じられないほど描き方がリアル。

どことなく古き時代の技術や風景。考えてみれば携帯電話はもとよりスマホも存在しておらず、個人が手にするパーソナルコンピューターですらない時代に、当時の技術力を持って月に行ったというのは何となくロマンを感じてしまいます。

自分が学生の頃ポルノグラフィティが
“僕らの生まれてくるずっとずっと前にはもう アポロ11号は月に行ったっていうのに・・・”
という「アポロ」という曲でデビューしてから20年。

かたやZOZOの前澤友作社長が月旅行を発表する時代でもあります。

多くの努力や犠牲、信念があって成し遂げられた人類の偉業。特別な宇宙飛行士のみならず、いつか多くの人々が当たり前のように宇宙から地球を見渡せる時代がやって来るのでしょうか・・・。

そのようなことを感じながら美しい世界は幕を閉じていきます。やや重めながらも今の時代に改めてスクリーンで観る価値のある1本。
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