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ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のmueponのレビュー・感想・評価

4.0
今日も「自分らしく」を連れて行く。

ルイーザ・メイ・オルコット(Louisa May Alcott)が1868年に出した自伝的小説「若草物語(Little Women)」を原題とし、それを現代的な解釈で再定義した『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』を観てきました。

コロナ禍が続く中、ようやく再開した映画館で久しぶりに観た作品であり、個性的に描かれるマーチ家四姉妹の活躍がとても輝かしい!

とはいえ、古典的名作「若草物語」に触れるのがほぼ初めてだったため、時間軸が複雑に切り替わる演出的なプロットやアメリカの南北戦争という時代背景、当時の女性が置かれていた社会的立場などは最低限頭の片隅に入れておいた方がより理解が深まることは間違いありません。

監督のグレタ・ガーウィグと主演のシアーシャ・ローナン(次女ジョー)は前作「レディ・バード」でもお馴染みですが、今作でも素晴らしい役回りでした。

時代は違えど女性の成長と生き様を描く点では共通しており、ひとつひとつの言葉の投げかけや行動は女性のみならず男性も共感を持って受けいられることでしょう。

共演するキャストも「美女と野獣」「ザ・サークル」のエマ・ワトソン(長女メグ)、「ミッドサマー」で一躍注目を集めたフローレンス・ピュー(四女エイミー)、「君の名前で僕を呼んで」のティモシー・シャラメ(ローレンス家のローリー)などこの上なく豪華。

主人公のジョーだけでなく、それぞれ登場する四姉妹にスポットが当たっており、印象的なエピソードもあるのでキャラクターの存在がより一層際立つ形になっています。

特に四女エイミーは、打算的で一見好意を持ちにくいキャラに見えますが、人間らしさの光るフローレンス・ピューの演じ方がとても印象的で、注目して見られる存在になっていました。

舞台が1860年代(19世紀)なので慣習や服装を見るだけでも楽しめますが、当時の女性の人生におけるゴールが(裕福な男性との良縁=)結婚であるとまだ広く信じられていた時代。

いわば性別によって著しく選択の幅が制限されてしまう時代にどのような職に就くべきなのか・・・。結婚という選択の大きさ自体に、理想と現実を感じさせずにはいられません。

もちろん、この物語から100年以上経った今でも、性別や人種にまつわる職業上の差別や事件が世界中で取り沙汰されていることから、既に過ぎ去った過去を描くのではなく、まさに今現在進行形で起きている問題を私たちに問いかけているといっても過言ではないでしょう。

「女の幸せが結婚だけなんておかしい」
「そんなの絶対間違ってる!」
「でも…どうしようもなく孤独なの」

自分の生き方を貫こうとすればするほど孤独に苛まれてしまうジョー。

最終的には世間一般の旧来的な価値観(結婚)に迎合してるように見えますが、そこに至るまでのプロセスは人生の「選択」の中で自ら導き出した答えであり、自らの「決断」が大きな意味を持ってくることが分かります。

改めて自らの生き方を考えさせられる作品としてとても素晴らしいストーリーでした。テンポも良いし最終的なLittle Womenの出版のシーンはハートカバーの原作を思わず手に取って読みたくなるほどです。
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