アズマロルヴァケル

恋とさよならとハワイのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

恋とさよならとハワイ(2017年製作の映画)
4.0
もっと評価されるべきインディーズ映画


・感想

B級映画『カメラを止めるな!』がインディーズでありながら口コミで爆発的にヒットさせたのですが、この『恋とさよならとハワイ』は無名俳優と低予算という点でありながらもかなりの傑作映画でした。正直に言えば映画ファンはこの『恋とハワイとさよなら』を過大評価すべきと断言するべきです。

監督の持論を展開させているようなリンコの台詞や登場人物の会話中にみられる絶妙な間、そしてほのぼのとした日常の風景を何も着飾ることなく描いていたので観てて退屈しなかったです。大学院の文学部に通っているイサムの日常もそうだし、ベンチに座って食事をとるリンコと友人の風景もそうだし、飲食店で酔い潰れるイサムの友人の妹もそうだし、そのなにもかもが自然でかつどの実際の街の風景にありそうな気がしてなりませんでした。

あと、無名俳優たちの演技がリアルで自然体だったのも良かったです。特にイサムの後輩であるカスミがイサムに向かって「ファイトです!」と言うあたりは実際に大学で異性にしそうな女子いそうだなぁと思ったし、後半にリンコとイサムがカレー屋に行こうと思ったら知らぬ間になくなってた下りなんかはモヤモヤ感を感じつつも自分も同じことしてたなぁと共感してしまいました。

唯一気になったのは、前半にリンコが母親からの引っ越し代を拒否したにも関わらず、後半ではどのお金で出たのか説明されずにイサムの家に同居していたリンコが新しい物件に引っ越してしまう点です。物語上気にするところではないのかもしれませんが、あれはリンコがお金を貯めてから引っ越しをするということなのに、後半でどうやってお金が貯まったかどうかも提示せずに引っ越しするシーンがあったので物語の時系列的に果たして引っ越し代は自分の金が殆どなのか、或いは改めて親がくれた引っ越し代を使ったのか……それだけがちょっと気になりました。

別れても元交際相手と同棲している女性の話にどこまで肩入れできるか分からないし、異性と同棲していたことのある人はもっとこの映画に感化されて悲しい気持ちになるんだろうなぁと思いましたが、まつむらしんご監督の手腕が良かったのか、笑いあり切なさありの面白いラブコメ映画だったのではないかと思いました。思わず夜に「さらけ出せー!私ーさらけ出せー!」と叫びたくなるほど素晴らしいです。