アズマロルヴァケル

フランケンシュタイン アダム・ザ・モンスターのアズマロルヴァケルのレビュー・感想・評価

3.2
人間になれなかった怪物の悲劇


・感想

佐藤健、小松菜々などの豪華キャストが出演している映画『サムライマラソン』の予習のため、参考程度にこの映画をレンタルで観賞してみました。

メアリー・シェリー原作の怪奇古典小説『フランケンシュタイン』を現代風に翻案、またはアレンジを加えたホラー映画なのだが、ホラーというよりかはヒューマンドラマに近いような内容。音で驚かせるといったホラー映画によくありそうな演出が一部のシーンにはあったものの、人造人間アダムの視点では人間らしさとは何かを問うという寓話的な映画となっていて良くも悪くも苦痛になる映画。

分かりやすく言えば綾野剛主演のテレビドラマ『フランケンシュタインの恋』をどぎつくしてるような内容。登場人物の行動は思い返せば登場人物の気持ちは分からなくもないんだけど、物語の登場人物の殆どはアダムにとっては不利になる行動を取ってしまっていてアダムが凄く可哀想に感じてならなかったです。事実上母親であるエリザベスもアダムを一度突き放しているので、何故そんなことをしたのかとてもやるせない気持ちになる。

敢えてダメなところを挙げると、登場人物の描き方としては人間をあまりにも悪い人間という前提として描いてしまっているところでした。脚本は一部では伏線回収しているところもあって悪くはなかったのですが、前半でアダムを逮捕しようと拷問にかける大勢の町民の描写があまりにも書き割り程度のものになってちゃんとした心理描写はなく、後半に登場する盲目の路上ミュージシャン、エディがアダムに怒ってステッキでボコボコにするシーンは雑さが目立ちました。つまり、要点を説明すると、醜い姿のアダム
を否定する人間ばかりが描かれていて、アダムを擁護する人間とアダムを批判する人間の衝突が描かれていないために登場人物の描写がちょっとワンパターンになっているのではないかと思いました。

とはいえ、ヴィクター・フランケンシュタインがそんなメインではない映画だったものの、寓話的な内容にも関わらずグロテスクなシーンが意外と盛り込まれていて、ホラー好きにも観れそうな映像で充分に魅力がありました。ラストシーンではアダムの視点を描くのはいいとして、もうちょいヴィクター・フランケンシュタイン側の視点を描いて終わらせたほうが良かったと思う節もありましたが、まあまあ他人にはオススメできる映画ではありました。

『サムライマラソン』が良作であってほしい。