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ブリムストーンのNMのレビュー・感想・評価

ブリムストーン(2016年製作の映画)
3.0
食事しながらは観ないほうが良さそう。
グロ、暴力、ホラーチックな恐怖。

助産師のリズは、救えなかった赤ちゃんたちのことで強い罪の意識を抱えている様子。
村人たちはリズを恨み、謎めいた牧師は執拗に目を光らせる……。

ヒロインが登場した時点で観客はみんな彼女の味方になると思う。幼さの残る表情で何かに脅えており、大勢の恨みから逃れ娘や家族を守らなければならない。日本版だったら安達祐実が適役かなと思った。

ヒロインが喋れないことを有効に利用した作り。大声を出したい場面で夫がその場を離れるとか、娘とさえコミュニケーションが完全でなく喋れる牧師になびいてしまうとか。

徐々に状況が悪化するのではなく、どんどん話が進むので飽きない。
それに、人物がそこにいると思いきやいない、という場面がとても多い。緊張が高まったところを何度もすかされる。

実は本当に悪いのは、というありがちな展開も考えられなくはないが、一旦円満な出産を見せてあるから彼女の正しさを信じて観られる。
また牧師の傲慢さが最初から示されているのでその可能性は低まった。自らが神の使者であり人を裁く権限があることを誇示しただけの説教。典型的ダメ聖職者。聖書から都合の良い部分だけを抜き出し都合の良いように解釈している。

最初は現在で、続いて過去のエピソード。
彼女が喋れなくなった経緯とは。
これも観ていてつらい。一人きりでさまよい、たどり着いた先でも散々な目に。
男たちは女を売り、女を買い、女を殺す。どれほど女性の地位が低かったか。

さらにさかのぼる過去。
彼女が牧師を警戒していたのは理由があった。

牧師は昔から、自分は正しい、全員自分に服従すべきという考え。
それに彼の教会も当時からカルト的。まともな大人なら全員奇跡体験をするもの、奇跡を経験していないものは晒し者にするという姿勢。全員が奇跡を経験しているとは思えないが、それが恐ろしくて嘘をついている様子。
牧師の妻と娘リズはどうも牧師の本当の娘ではなさそう。妻が故郷オランダで前の夫を失い、娘とともに牧師のもとへやってきたのではないだろうかという予測がたつ。

そんな父から娘が命を賭けて逃げ出さなければならない状況といえば暴力が最初に想像される。彼のリズを見る目、させる仕事、言葉、全てがおかしい。
妻はそれを感じ取り注意をそらすべく体を預けようとしているのが分かる。生きるためにここまでしなければいけなかった時代。

妻に対する異常な行動。彼女のように地獄へ行くぞと脅し村人は恐怖で支配される。追い詰めておきながら死者に対しすぐさま冒涜。娘を気遣いもせずさっそく支配。

再び現代。あいつはどこまでも追ってくるはず。どこから来るのか。馬だけが現れたということは途中で降りて歩いて待ち伏せるはず。
リズを助けようとする人がことごとく彼の手にかかるのが悲しい。絶望が高まる。彼女と娘は逃げ切れるのか。

その後のエピソードももう一波乱ある。オープニングのことなど忘れていたが見るとはっきり思い出せるのが見事。ほくろの位置や水中のシーン。

リズの選択は正しかったのだろうか。

設定の曖昧さは気になるものの、そこではなくスリルを味わう映画なのだろう。

クライマックスを観て、日頃から柔軟体操しておこうと思った。

メモ
ブリムストーン……brimstone. 硫黄、地獄の業火、(神による)責め苦、天罰、厳罰、やかましい女性などの意味。
ハルピュイア…… 顔から胸までが人間の女性で、翼と下半身が鳥。 「掠める者」という意味。
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