rage30

ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

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このレビューはネタバレを含みます

パキスタン人男性クメイルとアメリカ人女性エミリーの恋愛を描いたラブコメディー。

映画の冒頭、応援の為に奇声を上げるエミリーと、それを野次と受け止めるクメイルが象徴する様に、違う人種・宗教・文化を乗り越えていく姿が描かれていく。

ヒロインであるエミリー役を演じる、ゾーイ・カザンがとにかく可愛かった。
正統派の美人顔というわけではないが、時折見せる子供の様な笑顔はキュートだし、キツい下ネタをサラりと言う、飾らない性格も魅力的。

一方、主人公となるクメイルを演じる、クメイル・ナンジアニは如何にもコメディアン然とした、とぼけたキャラクターが面白い。
エミリーに対して、献身的に振舞う姿は涙を誘うし、彼の成長も本作の見所の1つだろう。


映画の中盤、エミリーは謎の病に倒れ、クメイルは彼女の両親と共に過ごす事になる。
最初は邪険に扱っていた両親だが、時間の経過と共に、クメイルを受け入れていく。
コメディクラブでクメイルに差別的な野次を飛ばす輩に、母親が食って掛かる場面は、特に感動的なシーンの1つだ。

この母親が自分達も両親を納得させる為に「何度も食事をした」と語る様に、“諦めずに時間を掛けて交流する”というのは、異なる文化を許容していく上で1つのヒントになるだろう。

また、父親は「浮気して一緒にいたい女が分かった」とクメイルに語るが、“自分達にとって何が大切か?”という本質を見失わない事もヒントの1つである。
時に異性と喧嘩したり、異文化と衝突する事があっても、それを忘れてはいけない。


映画の後半、エミリーは意識を取り戻すが、だからと言って、すぐにクメイルと結ばれる事はない…2人が結ばれるのは映画の最後だ。

この映画は、問題が安易に解決する事を許さない。
何故なら、現実の問題もまた安易に解決する事はないからだ。

だが、その一方で、ゆっくり時間を掛けて、大切な何かを見失う事なく、お互いが歩み寄れば、異性も異文化も共存し得る、希望も指し示している。

クメイルもクメイルの両親も、映画をキッカケに恋人と結ばれていたが、本作もまた誰かと誰かを結ぶ様な作品になる事を願ってやまない。

クメイル達が人種や宗教を乗り越えた様に、人種や宗教を超えて、多くの人に訴えかける作品である。
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