のほほんさん

サラブレッドののほほんさんのネタバレレビュー・内容・結末

サラブレッド(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

本作に最大の貢献をしているのは音楽だと思う。ただ、サントラ買って聴いてもなんも楽しくない(笑)
馬を見つめる少女。一回暗転の後ナイフが映り、そして音。一瞬にして不穏な空気に包み込まれた。

劇中も太鼓を中心に打楽器の音が続く。時に早くなったり。こんなBGMは初めてかも。

10代の少女の不安定な心情が生み出す物語は他にもあろうが、その内の1人には感情が無い、というのが何より面白い。

優等生に見えた少女は秘密を抱え、その嘘は感情のないかつての友達に簡単に見破られる。正直な感情と、ない感情がぶつかる。
感情のない少女は傷つくことを知らないから他人にもかなり率直にモノを言う。その言葉はいちいち的確なだけに残酷。

ところが、感情のある人がそれを抑えることをやめて素直になった場合、それはむしろもっと残酷な形として現れる。大嫌いな継父に指摘された様に、彼女は周りの人全てが脇役なのだ。

そしてもう1人、10年後の俺はスゲーんだぞ!と吐き続ける、子供みたいな出来損ないの大人。彼は少女達に翻弄されて、1つ成長する。本当の大人ではない大人の存在。これが遺作だというアントン・イェルチン、絶妙だった。