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地獄愛のemilyのレビュー・感想・評価

地獄愛(2014年製作の映画)
3.6
1940年代に約20人の女性を殺害し死刑となった実在の殺人鬼カップル、マーサ・ベックとレイモンド・フェルナンデスの事件に着想を得た狂気のラブストーリー。

 ミシェルはさびしい女の懐に入り、結婚詐欺を繰り返す男。グロリアもシングルマザーでターゲットにされたが、グロリアはミシェルを本気で愛してしまい、結婚詐欺を協力するように。しかし女と体の関係になる事がどうしても許せず、やがて殺害に至ってしまう。

 グロリアを演じるのはロラ・ドゥエニャス。彼女といえば脇役でよい仕事をする地味に徹する貴重な女優なイメージだが、今回は主役&狂気の女を体当たりで見事に演じている。冒頭生活感をあらわにしたシングルマザー、女っ気ゼロの彼女が、ミシェルに出会い、恋する女性に変貌する。目をキラキラさせ、全身からこの男が好きなんだということが伝わる見事な演技。そこから嫉妬に狂い、殺人を犯すにかけての変貌ぶり。目の奥から狂気が溢れ、唇が震える細部に至るまで、彼女から目が離せない。

 カメラワークに至っても、グロリア越し、ミッシェル越しと、顔の半分だけ映したり、シワが深く入った目元や口元のアップ、黒いレースのカーテン越しだったり、色彩やカメラの存在をアピールするような描写に魅せられる。 

 二人の愛はどこまでも純粋で、二人がいればそれでよかった。穢れない子供のように男は女をあやし、女は時折かんしゃくを起こす。まるでままごとのような恋愛ごっこである。恋の魔法にかかってしまった二人の世界は、どんどんゆがんでいき、やがて殺人が当たり前になっていく。そうして魔法が解けた時本当の愛に気が付くのだ。時はすでに遅しではあるが、ラスト我に返ったグロリアのスペイン語のトーンが余韻として残る。誰かを深く愛するという事は、一歩間違えればいつだって狂気と化する。でもそれは誰かを本気で深く愛した先にあるものである。