nt708

アネットのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

アネット(2021年製作の映画)
3.3

このレビューはネタバレを含みます

こういう映画のエッセンスを紐解いて批判的にレビューするのは野暮で好ましくないのだろうが、自分の頭の中を整理するという名目のもと、あえて試みようと思う。

まずタイトルでもある『アネット』が何たるか。最後のシーンを除いてヘンリーとアンの娘であるアネットはパペットとして描写されていた。つまりヘンリーにとって彼女は自分に癒しをあたえる傀儡に過ぎなかったのである。ゆえに名声を失ったヘンリーが「愛すること」そして「愛されること」を拒絶され、自らの身勝手を悔いることになる。結局操られているのはどちらだったのか。このアネットという存在がヘンリーの想像に過ぎなかったのかどうかもまた、解釈の余地が残る。

これらを通じて本作が描こうとしたのは、人生がいかに喜劇的、かつ悲劇的かということではないだろうか。シェイクスピアの「人生は夢」という言葉に代表されるように、我々が生きているこの世界は人間が生み出した幻想に過ぎず、いずれは陶酔のうちに死してゆく。この世が幻想であるということを仮に否定しようとしても、その証明するの人間であり、その目を通すことでしか証明することができない以上、先の命題を否定すること自体不可能なのである。

そう考えると本作が人間にとっていかに普遍的な題材を扱っているか理解できる。ただ、このような題材を本作のような描き方でやる必要があったかどうかは別問題であり、私の好みでないというのが正直なところである。
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