どこかエリック・ロメール作品を思わせる佇まいから繰り出されるのは、難解な女性心理ではなく、モラルと欲望の狭間で悶絶する監督自身の独白。
本作の記者会見で主演女優キム・ミニとの交際をカミングアウトした監督だが、もしかしたら、その為に製作した映画なのかも。
そう考えるとホン・サンスという人はお茶目というか愚直というか、、つくづく興味深い人だなぁと思わずにはいられない。
実に生々しい作り手の本音を切り取ったようなリアリティが、共感できる面も、また、逆に全く理解できない面も、共に楽しめてしまうという不思議。下衆の勘繰りとはよく言ったもので、人間は元来こういうものに心惹かれてしまうのだろう。
総じて、笑いも泣けもしない映画だが、
なぜかしら胸の奥の方に刺さったような、
これまた不思議な感覚に陥る。
時折見せる、不自然なまでにスピーディで無造作な、"寄り"のカメラワークも印象的。
そして、、
あの"近づいてくる男"は、一体何を象徴していたのだろうか。