かなり悪いオヤジ

はじまりの街のかなり悪いオヤジのレビュー・感想・評価

はじまりの街(2016年製作の映画)
3.5

この映画、出だしと中盤に少年の生き方を変えるような衝撃的なシーンが2つ用意されている。初っぱな友人とセリエAサッカーネタを話し合いながら主人公のヴァレリオが家に帰ると、なんと別居中の親父が母親を怒鳴りつけながらボディブローをきめている真っ最中。それを目にしたヴァレリオが思わず○○○○してしまうという、ただごとではないシーンから始まるのである。

『日々と雲行き』にも出ていた色っぽいマルゲリータ・ブイが演じる母さんが、旦那のドメバイから逃れるため、トリノに住む友人宅に息子を連れて逃げ込むところからお話が始まるのである。同じイタリア映画『エマの瞳』で抜群の存在感を発揮していた名女優ヴァレリア・ゴリノの使い方が少々もったいない。寂しがりやの変わり者でドメバイ親子を快く迎え入れるという以外、取り立てて大した役割を与えられていないのである。

そのゴリノに代わって、公園でフッカーをしているパツキンのラリッサちゃんが、(そのピッチピチのスタイルもさることながら)実にいい足、いな、いい味を醸し出しているのである。弟にどこか似ているヴァレリオの擦り傷を気遣い、遊園地でデート後キッスまでプレゼント。一気に舞い上がったヴァレリオが一目惚れしてしまうのも無理はないのである。

しかし彼女は娼婦。いたいけな少年はラリッサちゃんのあられもない姿を偶然目撃、トリノに越してきて以来友人ができずに悩んでいたヴァレリオは一気にグレてしまうのだ。この後ラリッサちゃんの出番がなくなってしまったのは何とも残念で、レストラン店主のありきたりな代理父親のシークエンスよりも、ラリッサちゃんのその後の方が何十倍も気になるのである。

自力ではどうすることもできない悲劇が起きた時、それを他人のせいにしている限りは何も変わらない。自分が変わることによって、ちょっとずつ本当にちょっとずつ周囲の状況が変わっているように見える。世の中そんなものなのだ。そして行為の最中に能面のような顔をしていたラリッサちゃんの気持ちが本当に理解できた時、真の意味でのヴァレリオ少年の人生が始まるのである。