回想シーンでご飯3杯いける

しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイスの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

3.9
カナダのフォークアート画家、モード・ルイスと、その伴侶であったエヴェレット・ルイスの半生を描いた作品。演じるのはサリー・ホーキンスとイーサン・ホーク。

本作の魅力は何と言っても先述の2人による素晴らしい演技。モードがエヴェレットの家政婦として同居する少し前からモードの他界まで、およそ30年ぐらいの時間の経過を、途中で役者を変えることなく演じきっているのだから凄い。若年性リウマチを患っているモードも、無口で無愛想なエヴェレットも、役どころとしては非常に難しいと思うのだが、歩き方や、窓から外を見る表情等のさりげない仕草から心情を表現する演技が、とても印象的だ。

2人が暮らす小さな家や、田舎の素朴な風景、フォーク調の音楽、そして時折挿入されるモードの作品や、サリー・ホーキンスが演技の為に学んだ絵が、世界観を豊かに演出し、目立った展開が少ないながらも、2時間弱の間、映画の中に引き込まれる。まだ障がい者や女性の人権に対する認識が進んでいなかった時代の話なので、特に前半では現代の視点で見ると理解しにくい部分もあるが、トータルとしては優しい空気に満ちた作品に仕上がっている。