ぴのした

デトロイトのぴのしたのレビュー・感想・評価

デトロイト(2017年製作の映画)
3.9
2018年見ておきたい映画第1弾。重い!!横暴な表現だけど、『ダンケルク』の絶望感と臨場感を持って『ドリーム』を撮ったら多分こんな感じです。

1967年、白人による不当な扱いを受けてきた黒人たちの暴動が発生。暴動の最中、銃声があったとあるモーテルに警察が踏み込み、その場にいた黒人たちを捕らえ暴行の末射殺してしまった、実際の事件を元に描いた映画。

まずこの映画、実際にあった出来事をモチーフにしているのもあって、撮り方がすごく臨場的!カメラはほとんど手持ちで走り回り、終始ブレッブレ。登場人物がカメラを回し続けるホラー映画みたい。ただ、そういうホラー映画とは違って、1つ1つのカットがかなり短い。パッパッと切り替わるスピード感がある。手持ちカメラとこの細かいカット割りのせいで、カメラの周囲で何が起きているのかわかりにくく、暴動の混乱の中にいる臨場感が味わえる。さながらドキュメンタリー映画。

ただ、あくまで事件の真相ははっきりとは解明されていない。これは事件の一部の証言を集めて作られたもので、あくまで「映画」と考えた方がいいと思う。

この映画では白人警官はかなり悪者風に描かれているけど、実際はただただスナイパーかもしれない黒人たちが怖かったのだと思う。もちろん黒人だからと言って尋問の際に暴行を加え射殺する行為は完全に悪に違いない。でも黒人たちが、権力と銃を振りかざす白人を恐れるように、白人たちも数の力で街を制圧しなりふり構わず店や車を襲う黒人たちが怖かったはずだ。

白人だから悪いとか、黒人だから良いとかそういうのは全くない。絶対悪があるとすれば、ただ純粋に差別や自分と違う者を恐れる恐怖心なのではないか。そう考えるとこれは白人と黒人の間だけの問題ではない気がしてくる。舞台となったデトロイトは、パリでも上海でも東京でもおかしくない。

ラストシーン、ラリーの歌う聖歌がすごく良かった。歌詞がしみて思わず泣きそうになった。重すぎてデートには向かないけど、どうあがいても出来が良い映画なので、社会派な映画嫌いじゃないぜ!って人はぜひ。