nt708

シェイプ・オブ・ウォーターのnt708のネタバレレビュー・内容・結末

2.5

このレビューはネタバレを含みます

込み入った『美女の野獣』といった印象でストーリー自体に新鮮味は感じられない。しかし、『the Shape of Water』の評価されるべきはその映像表現、つまり緑と赤の対比、劇中に登場する水のシーンetc...の美しさにある。

美しさと言えばあるいは本作のテーマかもしれない。表層に現れる美しさではなく、深層に眠る美しさに『濹東奇譚(永井荷風)』の一節を思い出す。

永井曰く、

真白だと称する壁の上に汚い種々な汚点を見出すよりも、投捨てられた襤褸の片にも美しい縫取りの残りを発見して喜ぶのだ。正義の宮殿にも往々にして鳥や鼠の宮殿にも往々にして鳥や鼠の糞が落ちているのと同じく、悪徳の谷底には美しい人情の花と香しい涙の果実が却て沢山に積み集められる。

要は美しいものの醜いところを探すのではなく、醜いもののの美しいところを探すことに何かしらの価値がある、本当に美しいものは目に見えにくいと永井は暗示しているのである(と私は思う)。

したがって本作はこれから先、お互いの愛を誰にも邪魔されることがないという意味でハッピーエンドだと思われる。この結末を一種の悲劇だと考える見方もあるようだが、そういう見方をできるのは我々が外野であるからに過ぎない。どのような状況であっても愛し合い、結果として死を迎えることになったとしてもその愛を永遠のものにしたいという欲望を実現すれば、誰しもが自分の一生に満足するはずである。

美醜と愛という人間にとっての大テーマが冷戦という社会背景とどう関係しているのかは再考したいところだが、まだよくわからないのが正直なところ、、
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