ヒナウラ

シェイプ・オブ・ウォーターのヒナウラのネタバレレビュー・内容・結末

3.7

このレビューはネタバレを含みます

アマゾンの奥地で神として崇拝されていたという生物を、人間に代わる宇宙飛行士としてロケットに乗せようという話が出てくるけれど、この生物そのものが、地球外生命体に見えてもおかしくない風貌である。

よくわからない生物なゆえ、人間にとっては危険生物であるはず。にもかかわらず、イライザを通して、観ている者にまでいつしか愛しき生き物に見えてきてしまう、その反転する過程がおもしろい。

ところで、イライザを通して、というのは、主人公に没入させるハリウッド映画ならではの語り方を踏襲しているからなのかもしれない。

それはそうとして、この作品の映画に対する想いに惹かれた。

いくつかのジャンルが入り交じるストーリーにしても、そもそもイライザの住まいが映画館の上というのもいいし、なにより、部屋から逃げ出した生物が、街をさ迷わず、下の映画館の中で映画を観て立ち尽くしていた姿に、とても好感を抱いた。

大袈裟なたとえかもしれないけれど、生物を受け入れる過程が、まるで人が映画に魅了されていった出来事と重なる気がした。

人を傷つけ、暴力を振るう一方で、人に興奮や感動を引き起こし、傷を癒し、夢(育毛!)まで与える――あの生き物は「映画」そのものではないのか。
そう捉えると、世界観そのものが愛おしく思えてくる。


この映画は、監督ならではの、映画への愛が詰まった作品なのだろう。
ヒナウラ

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