タキ

アナと雪の女王2のタキのネタバレレビュー・内容・結末

アナと雪の女王2(2019年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

前作で幸せに終わったかのように見えた物語だったが急転直下アレンデールが魔法の森に暮らす少数民族ノーサルドラを力ずくで統治しようとしていたという暗い過去に引き摺り込む。エルサは遠くから呼ぶ慕わしい声に誘われて揺らぎ続けていた自己のアイデンティティを探しに、アナは親友を失い失意の中でもいま自分に出来ることはなんなのかを真剣に考えひとり行動に移す。冒険の旅にはアナの恋人であるクリストフやトナカイのスヴェンも同行するが、彼女たちの決断には関係しておらず、終始会話もままならない状態。ヴィランは実の祖父であり、父は祖父の犯した罪を知らないというのも示唆的だ。やはり父権主義や有害な男性性から彼女たちは自由に生きている。
かと言って重苦しいばかりの話ではなく、オラフは姉妹のガス抜き的存在としていつも愛らしいし、魔法の森に置いて行かれたクリストフの歌唱シーンは面白すぎて繰り返して3回見た。恋の迷子になっていると自分の世界に浸り切った表情のクリストフが懐かしの80年代調のミュージックビデオとバラードで歌い上げる。クイーンのパロディまであって爆笑した。
クリストフはのちに自分のことばかりではなく相手が何をしようとしているのか何をして欲しいのか理解しようとすることでやっとアナと会話が成立し、前作ではエルサの力を閉じ込めようとする父親とそれに従うしかなかった母親が、実は娘の持つ不思議な力の答えを探しに全ての記憶を持つ川のあるアートハランへ危険な冒険の旅にでていたというのもホッとする。
ラスト、為政者として過去の間違いを認め「正しいことをした」アナが次の女王となり、エルサは第五の精霊としてノーサルドラの民と共に魔法の森で暮らす。アレンデールとの架け橋はエルサだけではない。ひとりの特別な力を持ったヒロインだけが世界を救うのではなく、橋にはたもとがふたつあるように両国が手を繋ぐことで初めて平和が成立するという当たり前のようでいて見落としがちな点に改めて気づかされる。ディズニーのような超メジャーどころがこのようなアイデンティティに深く切り込む物語を超ヒットした作品の2作目にもってくるということにはものすごく意味がある。
物語の骨太さもさることながら歌曲も聞き応えがある。前作のレット・イット・ゴーのような爆発的なヒットではないけれど、『Into The Unknown』も何度聞いても飽きが来ない。イドゥナ王妃の声を吉田羊がやってたのを初めて知った。上手い。
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