NM

ロダン カミーユと永遠のアトリエのNMのレビュー・感想・評価

3.0
中年にさしかかったロダンがついに芸術家として売れだし脂の乗った時期。弟子のカミーユたちは彼を崇める。ロダンは若い彼女たちと残してきた内縁の妻との間を行き来して……。

有名作、有名エピソード満載。特に感想、批評の表現は芸術鑑賞の参考になる。ロダン展などが催されたらこれを観てからいけば見る箇所が増えそう。映画として評価は高くないそうだが雰囲気はそこまで悪くなかったと思う。

はじめは典型的な年の差恋愛の様相。
最初は若い方が首ったけになるが、やがて成長し意思を持ち、今度は年上の方が執着する。
好奇心や向上心が高いからこそ経験豊富な人に惹かれるが、常に新たな経験や刺激を求めている。その提供が滞るとたちまち他の誰かに走ってしまう。

困難に遭い落ち込んだときだけが残されたチャンス。再びカミーユを取り戻したロダン。

その間トゥールで待つ内縁の妻ローズは当然心中穏やかではない。売れない時代をずっと支え続けた女性だが、戻ってきたり放って置かれたり。かといってはっきり別れるわけでもない。子どもも決して認知してくれず「君の息子」と呼ばれ続ける。
いざ一緒に暮らし始めても求めていた幸せは得られない。どうせまたこの男は若い女性を作って出ていくのだ。自分や息子を本当には愛しておらず、ただ自分の都合で帰ってきただけ。

ではカミーユは人生思いのままにできたかというとそうでもない。
ロダンに憧れて一緒になったものの、自分は芸術家として一向に芽が出ず常に越えられない比較対象があることでかえって落ち込む。
結婚したわけでもなく、妻や婚約者として紹介されることはなく、出産も許されず、内妻の影はいつまでも消えない。
自分の若さや労働力だけを奪われ、結局自分もローズのようになるのではないかと悩み続けただろう。
激しくぶつかり合ってついに別れても幻影はついて回る。
そして彼女とて長期間ロダンを支えたのに、結果もしかするとローズ以上の目に遭った。

作品内のロダンは決して相手を尊重していない。果たして愛なのかどうか私は知らない。
従順でいつでも待っていてくれる女性と、仕事に理解があり目の前にすると抗えない魅力を持つ女性。
両方を求めるロダンは結局誰から愛されたのだろうか。

ロダンも自分の仕事に悩んでいる。自分の美学を貫きたいが世間に評価されないとその分今後の仕事は難しくなる。批評家とタッグを組み、論壇や政府や依頼主たちと闘い続けなければならない。

カミーユを主演にした作品も複数あり、それも観てみたい。

メモ
ユゴー肖像…… http://collection.nmwa.go.jp/S.1966-0003.html
ダヴィッド・ダンジェ……David d'Angers(アンジェ出身なので名乗った。本名はPierre-Jean David。)1788-1856。
地獄の門………未完の作。世界にある鋳造は全て死後鋳造。日本には国立西洋美術館、静岡県立美術館。 http://www.spmoa.shizuoka.shizuoka.jp/rodin/#collection01
フランソワ・ポンポン……ロダンの弟子。作風は愛らしくモダン、滑らかでシンプル。晩年の「シロクマ」が有名。
エミール=アントワーヌ・ブールデル……ロダンの弟子。「弓を引くヘラクレス」等。
ソフィー・ポストルスカ……ロダンの弟子ブールデルの友人。ロダンに紹介され弟子に、後に愛人に。
NM

NM