emily

狂覗のemilyのレビュー・感想・評価

狂覗(2017年製作の映画)
3.8
劇作家、演出家の宮沢章夫が1998年に発表した「14歳の国」をベースに瀕死状態で教師が発見されたところからはじまる。犯人は生徒ではないかと疑われ、体育の授業で生徒たちが教室に居ない時間に、先生とこのたび臨時で教職に復活する谷野たち4名が勝手に荷物検査を始める。そこからうかびあがるのは生徒たちの現状と教師たちの真の顔。さらに思いもよらぬ結末へと導いていく。

 ほぼワンシチュエーションの中、谷野は過去のトラウマがあり、先生たちの視点、見える現実から想像する自分の現実の映像が交差し、ざらついた画質と、様々な色彩の中で幻想的に描かれている。何が真実で幻想なのか、はたまた幻覚なのか、観客の”真実”をまどわしていく。

 シンプルなストーリーの中で、生徒たちのいじめ、教師たちの援交などどこの時代にでもある問題をあぶりだし、しっかり個々の醜い心情に切り込みジワリジワリと少ない人数の中でしっかり感情がぶつかり合い、自然にドラマを生み出していく。

 今見ているものは現実なのか?目から入るもの、耳から入るもの、勝手な固定観念から自分の中で作り上げる”現実”。しかしそれの真実は同じ物を見てる人であっても異なるのだ。勝手に作り上げた自分の”真実”は大抵路線を大きく外して自分自身を狂わせていくのだ。誰にも見られていないつもりでも、誰かは必ずみている。誰も気づいていないと自分を偽ったその数々の行動は何らの形で誰かに見られているのだ。見られる恐怖が人を追い込み、しかし同時にそれは安心感も与える。見られてる事で自分の”真実”を作り上げ良い行動をする場合もあるだろう。見る・みられるの関係は、人を時に狂わすが、それが静寂をもたらす場合もある。要はバランスである。世の中には知らなくてよい事もあるし、首を突っ込む必要がない事もある。その見極めが大事だと思う。

 
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