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2重螺旋の恋人のfujisanのレビュー・感想・評価

2重螺旋の恋人(2017年製作の映画)
3.2
フランソワ・オゾン監督によるサスペンス・ホラー。

「スイミング・プール」や最新作「私がやりました」など、女性を主人公とする作品が多い印象のフランス人監督、フランソワ・オゾンによる2017年の作品。

フランソワ・オゾン監督作品は時間がある時に少しずつ見ていっている程度ですが、まだ50代にしてすでに30作以上を撮っており、ジャンルも多彩で、すごい監督だなと思っています。



本作の主人公クロエは原因不明の腹痛が治らず、婦人科医の勧めもあって精神科医を訪れます。冷静で穏やかな性格の精神科医ポールのおかげでようやく腹痛は収まり、そのままポールと恋仲になって一緒に暮らし始めます。

そんな中、ある日、クロエは街なかでポールが違う女性と歩いているところを見かけ、彼を問い詰めるのですが、その男はポールの双子の兄、ルイでした。

ルイはポールと同じ精神科医でしたが、性格はポールと真逆。しかし、そんな短気で傲慢なルイに、クロエはなぜか心惹かれていくのでした・・・というストーリー。



本作は、Filmarksではジャンルが恋愛となっていますが、ホラーと言ってもいい作品。

確かに中盤まではラブストーリー。フランス映画らしくセックス描写も過激。日本で2018年に公開された際はR18+指定だったというのも頷けるほどで、エロい領域を超えてアブノーマルなところまで描くので結構びっくりしました。

ただ、途中からどんどんホラー味が強くなっていき、終盤、あーなんか昔有名ホラー作品で見たことある!ってほどのグロ描写もあって、正直ホラー苦手な私にはしんどかったです💦

二人の男性の間で心も身体も激しく揺さぶられるクロエは精神的に不安定になっていき、終盤、男性との関係を清算すべく、驚くような行動に出るのですが、それで終わり?と思ったら本当のエンディングはその先にありました。

精神の不安定さの高まりとともに再び酷くなっていたクロエの腹痛。その腹痛の原因は一体なんだったのか、というのが、本当のエンディングになっています。

非常に凝った脚本で、海外でも評価は高い作品のようなのですが、日本ではそれほどでもないのは展開が少々乱暴なのと、過激すぎる表現のせいでしょうか。。



考察:

本作の原題は「L'Amant double」、アメリカでも「Double Love」となっていて、要は2重の恋人という原題。その邦題を「2重螺旋の恋人」としたのは正解だと思います。

二重螺旋といえばDNA遺伝子。一卵性双生児のDNAは同一で、本作のメインテーマは『双子』です。

劇中でも、双子の医師が経営する医院に上がる階段がどちらも螺旋階段になっていたり、登場する屋敷が左右対称(シンメトリー)になっていたりと、『双子』を表すメタファーが度々登場していました。

また、ルイがクロエに話す三毛猫のエピソード。オスの三毛猫は珍しく、生まれる確率は3万分の1。なぜそんなに確率が低いのか。オス三毛が産まれる時、母親の胎内で何が起きているのかという話は興味深いとともに、エンディングのヒントとなっていました。

(本作を観て双子について色々学べたことがあったので、ネタバレコメントとして残しておきます)

クロエが共感しにくいキャラだったこととグロ描写もあって個人的には苦手な映画になりましたが、映画としてはよく出来た秀作だったと思います。



2023年 Mark!した映画:334本
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