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女王陛下のお気に入りのfujisanのレビュー・感想・評価

女王陛下のお気に入り(2018年製作の映画)
3.7
18世紀のイングランド。アン女王の寵愛を巡る二人の女性の闘い

「哀れなるものたち」でアカデミー賞4部門を受賞したヨルゴス・ランティモス監督の作品で、同作で主演女優賞を受賞したエマ・ストーンも出演しています。



イギリスで有名な女王といえば、エリザベス女王(エリザベス一世)とヴィクトリア女王で、アン女王はマイナーな存在。また、彼女の時代の名誉革命やスペイン継承戦争のあたりは複雑すぎて、受験当時にムキーッってなった記憶があります。。

本作は史実に基づいた映画で、オリヴィア・コールマン演じるアン女王と、女王の寵愛を勝ち取るために暗闘するレディ・サラ(レイチェル・ワイズ)とアビゲイル(エマ・ストーン)、二人の女官の物語。

もともと女王と幼馴染だったサラは女王と同性愛関係でもあり、虚弱な女王に代わって実質的に権力を握っていた女性。そこにアビゲイルが割って入ります。

エマ・ストーン演じるアビゲイルは、父親の借金により没落した貴族の出身。遠い親戚でもあったサラを頼って宮廷で雑用係の仕事を得るのですが、失うもののない強みもあって、あざとさを発揮して、女官長サラの座を奪いにかかります。

まさに女対女の闘い。

「ラ・ラ・ランド」では夢を追うピュアな役柄を演じていたエマ・ストーンが肌の露出も多いあざとい女性役を演じた本作。ギョロッとした特徴的で大きな目も役柄に合っていて、当たり役だったと思います。

本作では、同監督の「ロブスター」で”近視の女”を演じたレイチェル・ワイズ、ホテルのマネージャー役を演じたオリヴィア・コールマン、そしてエマ・ストーン3人全員がアカデミー賞にノミネートされ、オリヴィア・コールマンが主演女優賞を獲得。
まさに、彼女たち三人の映画となっていました。



アン女王には、教養も政治能力も無く、酒と食に溺れた無能な女王というイメージがあり、概ね映画でもこのイメージが採用されていましたが、オリヴィア・コールマンが人間味溢れる悲劇の女王を演じていました。

先天的な持病の影響が原因とも言われていますが、彼女は死産や流産、病弱等で子どもを18人も失うという壮絶な人生を送っており、酒と食に溺れたというもの、仕方がなかったのかなとも思えます。

そんなアン女王が、サラが去った後、分からないなりに議会に出席していた一生懸命な姿が印象的でしたし、彼女の治世下でイングランドとスコットランドの合邦(合併)が実現し、初代のグレートブリテン女王になるなど、実績も残しています。

聞けば、彼女の無能なイメージは闘いに負けたサラが女王の死後に書き記した回想録によるものらしく、死後まで続く女性たちの闘いの執念深さを感じます。。

しかも、彼女の子孫にはイギリスのウインストン・チャーチル首相、ダイアナ元妃もいると言うんですから、根っからの優秀!?な家系なんですね。



本作はヨルゴス・ランティモス監督作品にしては「聖なる鹿殺し」や「ロブスター」などのようなクセ強さはなく見やすい作品で、宮廷美術や壮麗な衣装美術は「哀れなるものたち」に通じるものがありました。

史実をベースにした作品でもあり、歴史も学べる良作だったと思います。

参考情報:
歴史の中の『女王陛下のお気に入り』の時代と登場人物たち | Call of History 歴史の呼び声
https://call-of-history.com/archives/19914

「女王陛下のお気に入り」:史実に触発され、実在した女性三人のキャラクターを大胆開発、宮廷を舞台に人間の本質を描くダーク・コメディ - 夢は洋画をかけ廻る
https://dayslikemosaic.hateblo.jp/entry/2019/07/10/050000
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