mrかっちゃん

ラブレスのmrかっちゃんのレビュー・感想・評価

ラブレス(2017年製作の映画)
4.8
離婚が決まった両親の間には12歳になる息子が1人。
完全に関係は破綻しており会話を始めれば互いを罵り合い、親権の押し付けをしている。
その口論を聞き声を押し殺し号泣する息子。

お互い新しい恋人を作り人生をやり直す事しか考えておらず、母は自分の美貌。
父は世間体と出世のことしか頭になく自分のことしか考えていない。
そんな2人の間から突然息子が消える。

「ゴーン・ガール」のようなエンターテイメント性を入れるという事は一切せず、
淡々とじっくり息子はどこに消えたのかを描いていく。
カメラワークや映像のトーンは一貫して冷たく希望の色は感じられない演出をしている。

失踪した息子を探す警察と捜索団との連携や捜索シーンをとにかくリアル。
人がいなくなった場合どのように捜索するのかを段階を踏んで行っていく。
リーダーの指示のもと完璧に統率の取れた行動力で淡々と行われていく様子が、まるで捜索シュミレーションのように描かれていてストーリーへの信憑性が肉付けされている。

だがしかし失踪した事など気にも留めない様子で互いの恋人と関係を深めていく2人。
母は明らかにスマホ依存症で現代に蔓延る問題性を提示していた。
高級なレストランで下品に写真を撮り、
嬉しそうにSNSにアップする。
セルフィーを集団で撮る人たちなど場所をわきまえられないのかと心底腹が立った。

父は若い恋人との間に子供を作ってもうすぐ出産する様子。
恋人との会話で不安そうに「私の前に何人かいたの?」と問いかけられるが適当に誑かす。
きっとこの父は何人もの女性と関係を持っていたのだろうと何となくわかる。

お互いに問題があるのに関わらず、それを認めようとせず罵り合うことしかしない2人は人間の本質をそのまま抉り出したように思えた。

「愛はきっと奪うでも与えるでもなくて気がつけばそこにあるもの」とMr.Childrenは歌っている。
まさしくその通りなのかもしれない。
その愛故に人間は戸惑い確かめあおうとするのだと思う。
結婚して子供を作り育てるのなら離婚はしてはいけない。
何より傷つくのは子供だから。

愛を求め愛に溺れ愛に殺される。
そんな物語です。