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バンブルビーのokomeのレビュー・感想・評価

バンブルビー(2018年製作の映画)
4.0
「あんなの動かして大丈夫なのか?」
ーーきっと死ぬな。でも嬉しそうだ。


トランスフォーマーシリーズと言えば、演者もスタッフも何かキメてるんじゃないかと心配になる程のハイテンションでもって、途絶える事の無い大爆発の轟音とぐるんぐるん回るカメラワーク、そして最悪のタイミングでカマされる下ネタと無駄にセクシーな姉ちゃんが混然一体となって酩酊と胸焼けを誘発してくるつまりはいつも通りのマイケル・ベイ監督作品と言う認識しかありませんでした。
何作かは観ているはずなんですが、結局どれも映画と言うより「マイケル・ベイ」なのでストーリーなんて覚えていないし、そもそもそんなものを期待する方が野暮だと思っていました。

それなのに、今回、
トランスフォーマーを観ながら号泣した。

こんなことある?

なんて爽やかな作品なんだろう。
そりゃもちろん、今作は監督が違うって事もあるだろうけど、それにしても……うーん……。
いやもう、うーんしか言えないや……。


今までのごちゃごちゃが嘘のような、
至ってシンプルな異星人と少女の友情物語。
そう言えばこのシリーズ、スピルバーグが製作総指揮に関わっていたんだよなと改めて思い出させられるような、圧倒的なジュブナイル感に今作は満ちています。80年代という時代設定や主人公の父親が不在である事も相まって、『E.T.』等の彼の作品に対するオマージュを、個人的には強く感じました。
「未知との遭遇から始まる一夏の思い出」。
全編通して漂うこの郷愁すら誘う空気は、迫る地球の危機に反してとても和やかで、そんな中でハートフルな友情を育む2人の主人公が魅力的でした。

まずなんと言ってもバンブルビー。
とある理由から喋れない、記憶がない彼ですが、
どうにか意思を伝えようとする仕草や、知識を吸収しようとじっと相手を見つめて集中する姿がメチャクチャ可愛い。
基本的にやんちゃ坊主で、怒られて拗ねたり、自分の巨体を持て余している様子が、何だか昔飼ってた犬を彷彿とさせます。
見た目は機械なのに、その目元や雰囲気にきちんと彼の表情が伺える。このあたり、さすが前作で見事無機物に命を吹き込んで魅せたトラヴィス・ナイト監督だなぁと感動しました。

そして、もう1人の主人公チャーリー。
父親を亡くした現状を受け入れられなくて周りに
当たってしまう、でも本当はそんな自分が一番嫌いと言う思春期ガール。
彼女を演じるヘイリー・スタインフェルドがまた凄く上手い。特に映画前半は殆どのシーンで仏頂面で、なにか思い詰めたような眼差しを遠くに向けていますが、それがたまに、ふとした瞬間に崩れる。その度に、纏う空気そのものが無邪気な子供のようになったり、反対にとても大人びて見えたり。
まさに揺れ動く年頃を表情一つで自然に体現していて、その巧みさについ自分自身が同じ年代だった頃を重ねてしまう。
特にあの、家族の団らんに素直に入っていけない
シーンでうわあああってなった。うわあああああ!

そんな彼女に笑顔をくれて、危機に瀕したときにはしっかり凛々しく守ろうとするバンブルビー。
彼と悪友のように騒いだり、時には母親のような優しさを垣間見せていくチャーリー。
お互いに補い合うその関係性が、本当に微笑ましくて可愛らしくて、ああ、もう……尊い……。

2人を取り巻く家族たちも凄く良かった。
劇中でチャーリーが語った通り、「一緒にいると腹が立って仕方ない」まさにそのものの見た目と性格の騒々しさ。でも、何かにつけて娘を気に掛けている事がこちらにはちゃんと伝わる愛すべき人たち。
彼らと向き合う決意の一歩として、チャーリーがトラウマを克服する展開には正直鳥肌が立ちました。
まさか、すっかり忘れていた伏線を、あのタイミングで回収してみせるとは……。

ああ、本当に、良いものを観たなぁ。
友情も、家族との関わりも、そしてもちろん最高に格好いい変形ロボットの戦闘シーンも、あらゆる面で童心に返らせてくれる。
きっと、原作ファンが本当に観たかった映画って、こういうものだったんじゃないかな。
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