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ヴァーサス/ケン・ローチ映画と人生のSPNminacoのレビュー・感想・評価

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『わたしは、ダニエル・ブレイク』の撮影風景を交えつつ、不本意な時代を経て紆余曲折したキャリアと変わらない信念を振り返る。たぶん、前に観たドキュメンタリーの完全版かな。
上流階級が舞台なら政治的でなく、労働者階級の映画だけ政治的と言われるのはおかしな話(政治権力握ってるのは上流階級なのに)。違うのは、労働者階級の生活を撮るのはカウンターになること。レフトを自認するケン・ローチの映画は社会の階級格差、不正義、大きな声に対抗して小さな声を代弁するものだ。ヴァーサスとは、その声を塞ごうとする相手がいるから必然的にそうなる構図。
役者経験があることと俳優選び、演出スタイルの関係にはなるほどと思った。けどリアリズムといっても、予め脚本で展開を知らない俳優自身の感情を反映した演技はさすがにキツいのでは…余程の信頼とケアがないと。また、ハリウッドに渡ったキャロル・ホワイトのその後が不憫でならない。
とはいえ、映画は熱くてもローチ本人はいたって静かで内省的。ガブリエル・バーンが言うように、だからこそ敵に回したくない凄みがあり。一方で、キラキラしたミュージカル好きというのは何かすごくわかる。だって、彼の映画にはユーモアやロマンティックな面もあるから。見え隠れするファンシーな部分が微笑ましいバランス。基本的に芝居が大好きなんだろうね。『ケス』の撮影話、デヴィッド・ブラッドリーの今の姿(殆ど変わらない)が堪らなかった。
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